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【感想と考察】『【推しの子】』改めてアクかなの軌跡を辿って復讐の結末と卒業ライブの関係を考察する【漫画】

 皆さんこんにちは。

 本記事では『【推しの子】』について、重曹推しであるブログ主が改めて物語の変遷を追いつつ、今後の展開についていくつか考察することを目的としています。

 つらつらと書いていたら合計1,2000字越えとなってしまいました。適当に読み飛ばしていただけたら幸いです。他記事にも同様の記載がありますが、ブログ主は重曹推しです。そのため、記事の内容や趣旨についても重曹寄りになっています。ご容赦ください。

 以前より同様の記事は作成しています。

 気になる方は以下リンクより参照ください。

isoisogingin.hatenablog.com

isoisogingin.hatenablog.com

 こちら全体の目次です。

本ブログ記事の前提

 本ブログ記事には2つの前提がある。

 ① ブログ主が重曹推しであること

 ② 物語の150話までを参考していること

 ①に関しては上述している通りである。ブログ主は本作を読み始めた当初、重曹登場時からの重曹推しである。そのため記載内容やその目的は重曹寄りになる。それが苦手な人には記事を読まないという選択を取っていただいて構わない。

 ②に関しても記載の通りである。2024年5月23日更新の150話を最新の状態としてブログを記載していく。今後、物語が更なる展開を迎えた場合を考慮し、前提として敢えて記載する。

 『【推しの子】』では1~150話がいくつかの章に区切った上で物語が展開されている。しかし、本ブログではそれら全ての内容を語りきることは目的としていない。そのため、意図的に取り上げる話数・場面を限定していることはご承知いただきたい。

 現在、『【推しの子】』は第一章「幼少期(プロローグ)」から第九章「映画編」まで話が進んでいる(間違いがあった場合はご指摘いただきたい)。その構成とその中から取り上げる話については、以下の画像にて整理する。

 これらを前提として語っていきたい。

参考:ブログ主記載

 加えて、ブログの構成として今までの全体の流れや重曹関連で注目すべきシーンなどを全体抑えた上で、今後の展開について考察していく。そのため振り返りが必要ない方は最後の方まで飛ばしてくださっても構わない。

第一章「幼少期(プロローグ)」

 『【推しの子】』では第一章で1話ずつ冒頭で未来軸の描写が描かれつつ、アクアとルビーの幼少期が描かれる。ここで注目するのは6話である。

 6話では重曹が初登場する。

 幼少期の重曹は「天才子役」と評され、天狗状態となる。その撮影現場でアクアが子どもらしくない不気味な演技を披露して監督の期待に応える。結果として、重曹は自分の未熟さを自覚するという展開。

 ここでの二人の邂逅が、結果として重曹の役者人生や仕事観に大きな影響を与えていることはよく描かれている。そのような意味で、間違いなく重曹の人生にとってアクアという存在は大きいものなのだ。

 そしてこの6話時点で大きく2つの考察があった。1つ目は、未来軸で重曹が「あーくん」呼びしていること。2つ目は、「天才もナイフで刺されれば」と発言していることだ。

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Ⓒ 集英社 2020

赤坂アカ/横槍メンゴ『【推しの子】』6話 より

 そもそも、第一章における冒頭の未来軸はとある映画の撮影に関するインタビューであることは当時から考察されていた。そして、そこからアクアの復讐が映画製作に繋がることは予想通りの結果になったと言える。

 その際に上記2つの考察があったのだ。

 1つ目に関しては、伏線として108話にて回収された。こちらの内容については後段にて語る。ただ、6話時点での考察内容として、「あーくん」という特別な呼称から重曹とアクアはある程度親密or特別な関係になることは予測された。

 そして、私としてはこの呼称は重曹が将来的にアクアと恋仲になる重要なファクターであると考えている。このインタビューが世に発表されるものと仮定した時に、その中で特別な呼称を用いるか?という疑問があるのだ。つまり、重曹とアクアの関係はある程度世に周知されてる状態でも不思議ではない。

 続いて2つ目。こちらの発言については、王道に考えるのであれば「アイ」を指した発言であろう。実際に映画『15年の嘘』でアイの真実(脚色はされている)が公開される。それに合わせた発言であり、それ故に不謹慎だと訂正した。

 しかし、物語が進むにつれて、もう一つの可能性が浮上した。それが「あかね」を指し示した発言であることだ。重曹とあかねはライバル関係として対比して描かれ、重曹もあかねを天才であると認めている。このようなミスリードは赤坂アカ先生も好むところであろう。

 そして、後段にて語っていくが、あかねはアクアの復讐に自ら深く関わっていく。そこから考えられるのは、アクアの復讐関連であかねがナイフで刺されるという結末だ。これ自体は十分にあり得る展開であると考える。

 ただ、これは展開としてあり得る一方で、物語の結末に大きく関わる要素でもある。カミキにアイを殺されたことから始まったアクアの復讐物語。その復讐劇の中でアクアの周知している人物が殺害された場合、アクアは取り返せないほどの業を背負うこととなる。つまり復讐の連鎖が終わらないのだ。

 勝手な予想もとい願望であるが、本物語は最終的にはハッピーエンドの結末と考える。そう仮定した場合、カミキに誰かが殺されるようなことはあってはならないのだ。だから私が考える展開としてはあかねが誰か(例えば重曹)を庇うような形でナイフで刺されるものの一命を取り留める。このようなところだろうか。

第二章「芸能界編」

 第二章はアクアとルビーが高校生になった状態からスタートする。その進学先の高校で再会を果たすのが重曹なのだ。アクアを見つけた際に「やっと会えた」と発言していることから、重曹の中でアクアの存在が大きいことはよく分かる。

 そんな中で重曹が出演するドラマ撮影にアクアも参加することとなる。その作品こそが『かぐや様』の頃より登場している『今日は甘口で』という少女漫画だ。アクアは復讐の糸口として鏑木Pに接触することを目的として参加することとなる。

 しかし、『今日あま』の撮影は主役の大根役者ぶりにより酷評状態。重曹も「便利な役者」としてカバーを強いられる事態。そこでアクアが起点を利かせることで、ドラマ撮影は良いものとなり、重曹も実力通りの演技を披露することができた。

 この章で重要なのはたった1つ。

 重曹が恋に落ちたことだ。

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Ⓒ 集英社 2020

赤坂アカ/横槍メンゴ『【推しの子】』17話 より

 17話までの展開を見るに、この撮影の前より重曹の中でアクアの存在が大きかったことは間違いない。この瞬間、明確に恋心は生まれている。

 そして、幼少期に重曹の役者観や仕事観を覆したアクアであったが、この撮影で更に重曹の役者としての評価を膨らませることになる。こうしてアクアは重曹の人生に影響与えまくりの男になったのだ。

 第二章は重曹がアクアに惚れた結果として、惚れた弱みとしてアイドルグループ「B小町」に加入させられることとなる。ここから分かる通り、重曹のライフプランに「アイドル」は無かったものの、アクアへの好意の一環として加入したことも窺える。

第三章「恋愛リアリティーショー編」

 第三章にてアクアは鏑木Pの伝手により「今ガチ」という恋愛リアリティーショーに出演することとなる。そこで登場するのがあかねである。

 「恋愛リアリティーショー」は内容も視聴者も過激になる傾向がある。そこで炎上してしまい、自殺未遂にまで追い込まれるあかね。それを助けたのがアクアである。結果として重曹同様にあかねにとってもアクアは大切な存在となる。

 それと並行して露になったのが「あかねの才能」である。まるで役者としての演技力に加えて常人を遥かに超える想像力でアイ本人かと疑うほどの演技を見せるあかね。そのあかねの様子をみたアクアは利用価値があると判断し、番組の最後にあかねと付き合う選択をする。

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Ⓒ 集英社 2020

赤坂アカ/横槍メンゴ『【推しの子】』30話 より

 ただ、ここで留意しておかなくてはいけないのは、番組上の行動であること、そしてアクアのモノローグで「黒川あかねは使える」と明確に記載があること。ここから窺えるのは、アクアとしても本気の告白ではないといいうことだ。

 しかし、重曹は純粋かつ重めの恋愛観の持ち主であるため、この様子が放映されて枕片手に涙を流す。この純粋かつ重めの恋愛観は物語上で一貫して描かれる。後段でも着目したい。

 このような展開を受けて、重曹とあかねはこの後の章でも物語の構造上対比されるような形で描かれていく。しかし、これは赤坂アカ先生が敢えてそう描いていることでもある。

 実際にX(旧Twitter)では下記投稿もある。

 こちらについては別途後段にて議論したい。

 このような展開であかねというライバルが現れた重曹であるが、アクアから重曹への想いが少し見えるシーンもある。それが30話なのだ。

 アクアは前世の記憶を引き継いだ転生者。2周目の人生を生きる彼の中には2つのアイデンティティが存在する。1つ目が前世の記憶。つまりはゴローだ。そして2つ目がアクアマリンとしてのアイデンティティ。前世の記憶など関係なく、一般的な高校生男子としての感情や記憶。

 ともすれば、アクアは悩ましいのだ。今の自分の行動は誰のどんな感情によって起きているのか。なんとも思春期男子らしい悩みである。そしてその相談相手に選ばれたのが重曹である。二人は学校をさぼって公園でキャッチボールをすることに。

 そこで悩みを吐露している。

 幼少期の頃はむしろゴローとしてアイデンティティを保ちながら行動していた。それが長い時を経過するにつれて、本来ゴローとしては為しえなかった経験を重ねる。その経験はかつてのゴローとは異なる価値観や感情を作ることとなる。

Ⓒ 集英社 2020

赤坂アカ/横槍メンゴ『【推しの子】』30話 より

 この発言を重曹に対してする。その意味合いとして大きいのは、重曹こそゴローではなくアクアマリンとして対面している存在だからなのだろう。そんなアクアは重曹相手に年が近い人を恋愛対象とすること、ただし年上が良いことなどを暴露する。

 ここで明確にアクアとしての結論が出る。アクアがあかねに抱いている感情はアイの幻影であることだ。これは後段でルビーのアクアに対する感情も同様であるため、先行してこちらにて記述しておく。

第四章ファーストステージ編

 「今ガチ」の収録を経てアクアの身の回りには3つの変化が起こる。1つ目はMEMの「B小町」加入。2つ目は鏑木Pとの関係強化。そして、3つ目が重曹との関係がギクシャクすることだ。

 この関係の悪化を受けて、アクア自身も重曹に「傷つく」と発言をしている。そこから読み取れる心理は当然ではあるが「アクアは重曹に嫌われたくない」というものだ。

 そこでアクアが選んだ行動は「ぴえヨン」のフリをして、陰ながら「B小町」もとい重曹のサポートをするというものだ。そこで重曹に対してかける言葉の内容は正しく有馬かなという人物をしっかり見ているからこその発言だった。この言葉に重曹も背中を押されるのだ。

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Ⓒ 集英社 2021

赤坂アカ/横槍メンゴ『【推しの子】』35話 より

 重曹はアクアがぴえヨンに変装していたことに気付いてしまう。そこで「ぴえヨンの発言=アクアの発言」だと気づくのだ。

 そこに加えてライブである。ライブ中、アクアは3人分のサイリウムを堂々と振る。重要なのはそこに重曹の色も含まれているということだ。自分の好きな人が必死に応援して「見て」くれている。

 ただ、その理由が「妹のいるアイドルグループだから」では嫌なのだ。アクアの行動によって重曹は「自分を見てくれる人が居る」という事実を認識した。これはアイドルとして活動する重曹を後押しする。そしてそれ以上に一人の恋する乙女として、その恋心に火をつけるかたちとなったのだ。

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Ⓒ 集英社 2021

赤坂アカ/横槍メンゴ『【推しの子】』38話 より

 実際問題、このコマではタイトル回収が行われている。タイトル回収が漫画の物語の中でどれほど重要な意味を持つか。その役割を何故重曹が担っているか。そこらへんはメタ的な考察になってしまうが、大きな意味を持つだろう。

 そして、ファーストライブを終えて、アクアと重曹の仲は元通りとなる。アクアが変装していた理由を、「重曹と話したかった」とポジティブに捉え、煽り煽られができる関係になるのだ。

第五章2.5次元舞台編

 2.5次元舞台編。この章はどちらかと言えば、重曹ではなくあかねのターンである。舞台を成功させるために必要な感情演技。その最中でアイの死亡の瞬間がフラッシュバックし、過呼吸を起こすアクア。そこに寄り添うのが彼女の肩書を有するあかねだ。

 そこでアクアの「アイ」という寝言から、あかねは持ち前の想像力と推理力により、アクアが抱えているアイの真相に辿り着く。そこであかねは明言するのだ。アクアが人を殺す場合、あかねも一緒に殺す。

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Ⓒ 集英社 2021

赤坂アカ/横槍メンゴ『【推しの子】』52話 より

 先ほども引用したこと投稿通りの対比関係だ。

 それと同時に描かれるのはあかねの演技の原点に重曹が居ることだ。あかねが約っ社を志した理由は重曹の子役時代の演技が起因している。だからこそ、あかねは重曹に昔の様に全力で人を魅了する演技を重曹に期待する。

 これは「今日あま」の撮影でも描かれている通り、本来は重曹が持っていた才能。そして芸能界での便利な利用に付随して重曹が自身で抑え込んでいたもの。結果として、この舞台によって重曹はその才能を取り戻すこととなる。

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Ⓒ 集英社 2021

赤坂アカ/横槍メンゴ『【推しの子】』63話 より

 自分を中心とした主人公に劣らない演技。目を焼くほどに眩しい太陽のような演技。その様子は鏑木Pの目にもしっかりと焼き付けられる。失われたと思われていた光を取り戻した重曹に対して、鏑木Pは評価を改めるのだ。

 この鏑木Pの評価については、物語後半及び今後の展開にも大きく関わってくる部分であると思われる。そのためここに敢えて記載する。

第六章プライベート編

 プライベート編では端的に言えば、以下3つの変化が生じた。

 1つ目が、ルビーの闇落ち。ゴローの死体発見により、ゴローに恋愛感情を抱いていたさりな(=ルビー)は復讐を決意することとなる。

 2つ目が、オカルト的要素が働いていることの判明。転生している以上自明ではあったが、謎の少女の登場、舞台も宮崎県高千穂という部分からそのオカルト要素が物語に大きく絡んでくることが考察された。

 3つ目が、あかねとアクアの正式交際である。ここについては未だに納得がいかないのだ。ゴローの白骨死体が発見される。それに対して罪悪感を抱くアクアを心配し、慰めるあかねは分かる。そこからいきなり告白に飛ぶのは読み返してもよく分からない。

 敢えて考えるとすれば、アクア視点での復讐の消滅か。DNA鑑定の結果から復讐対象が死んでいると思い込んでいるアクアにとって、この瞬間復讐は終わっている。そのため次の目的は「普通の幸せ」であり、その対象として最も近かったのが仮で付き合っていたあかねであったということだろう。

 実際重曹にあかねとの交際を明かす際も「ちゃんと付き合うことにした」と発言している。これは好意が生まれたというよりも、仮で付き合っているのは良くないという視点・感情が多分に含まれていると私は感じる。

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Ⓒ 集英社 2021

赤坂アカ/横槍メンゴ『【推しの子】』81話 より

第七章中堅編

 アクアがあかねと付き合うことで何が起こるか。そう、重曹とアクアのギクシャクの再来である。それに加えてルビーも闇落ちしたことにより、一時苺プロの中には不穏な空気が流れるのだ。読んでいる読者にも伝わるほどに。

 そこで頼れる女、MEMが動く。

 MEMとアクアの会話から読み取れるのは、アクアが今後アイドルや役者として売れていく重曹を気を遣って距離を取っているということだ。

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Ⓒ 集英社 2022

赤坂アカ/横槍メンゴ『【推しの子】』83話 より

 ともすれば、あかねと付き合っていることにもある程度合点が行く。重曹はアイドルや役者として売れていく上で、自身の存在が障壁となる可能性がある。一方で、あかねであれば「今ガチ」で番組内で告白した文脈があり、自身の存在が文脈となりにくい。

 それ故のあかねとの交際だろう。

 ただ、発言内容からして、アクアは重曹に対してそこそこ重たい感情を抱えていることも見て取れる。それこそMEMがある程度察してしまう程にはである。

 ただし、そのアクアが期待する「普通の幸せ」も長くは続かない。アクアの前提には復讐が終わっていること、がある。しかし、苺プロ元社長壱護との会話によって、時系列の矛盾が暴かれるのだ。

 ここら辺については別記事にて考察していた。

isoisogingin.hatenablog.com

 この矛盾の判明によってアクアの「普通の幸せ」は瓦解する。

 アクアが動揺している間に傘を差しに来てくれた重曹と更に溝を深くする出来事があったこともこの場で一言触れておく。

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Ⓒ 集英社 2023

赤坂アカ/横槍メンゴ『【推しの子】』95話 より

 一方、あかねはアクアの「普通の幸せ」を崩したくない。そのため、アクアよりも先に犯人を殺すという選択を取る。その行動は途中でアクアに露呈し、止められる。アクアはあかねに対して「二度と関わらない」という発言を残す。

 以下一文は完全に邪推であるが、わざわざこの言葉が強調されていることには、当時ヒロイン論争でジャンプ+等のコメント欄が荒れていたことに対する、作者なりの意図が含まれている気もしないでもない。

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Ⓒ 集英社 2023

赤坂アカ/横槍メンゴ『【推しの子】』98話 より

 これにより、第七章時点では、アクアは重曹とあかね二人共から距離を取った状態となった。これは復讐に人を巻き込まないためであるという理由は有りつつ、重曹と溝を深くしたのは完全に想定外であったことが窺える。

第八章スキャンダル編

 アクアとの溝が深くなった。

 そんな重曹は知り合いとの付き合いの延長から知らぬ間に監督の家に連れ込まれるという事態が発生する。重曹の貞操自体は、持ち前の純粋な恋心により守り切る重曹。しかし、その帰る姿を週刊誌に撮られてしまう。

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Ⓒ 集英社 2023

赤坂アカ/横槍メンゴ『【推しの子】』101話 より

 ここで重曹をアクアが助けて…という展開になるかと思われたが、重曹はそう簡単に折れるような人間ではない。いっそ開き直った重曹は、改めて自分の力で芸能界を生きていくことを決意する。

 そして、それを後方腕組みおじさん面で、「分かっていたよ」感を醸し出すのがアクアである。彼も物語序盤から描かれている通り、大概重曹ヲタクなのだ。

 しかし、アクアは重曹が自身で立ち直ったのを理解した上で、その事態を最大限に利用する。それが「アイの子どもである事実」の公表だ。これはアクア視点では、復讐を始める上でのスタートラインであり、一方で結果としては重曹が救われることとなった。

 重曹が抱えていた偽りのスキャンダルは「アイの子ども」という何倍も大きい真実のスキャンダルによって塗り替えられてしまったのだ。

 この結果に対して、重曹は素直に(ツンデレであり素直ではないが)感謝を述べる。その際に、アクアが重曹を守ろうとして避けていたことが晴れて重曹にも伝わる。こうして第六章後半より継続していた誤解は解消されるのだ。

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Ⓒ 集英社 2023

赤坂アカ/横槍メンゴ『【推しの子】』107話 より

 +αであかねと別れたことも明言される。

 しかし、より大きなスキャンダルの結果としてアクアは名前が広まってしまう。その状況にかこつけて提案されるのが重曹の「あーくん」呼びである。意外とぬるりと回収されたが、冒頭にて記載した未来軸インタビューの伏線回収である。

 正直、もっと特別な関係に発展してから呼び始めると思っていただけに正直驚いた。しかし、それを人前で呼ぶかどうかというのは全く別問題であるし、それを聞いた周りが二人の関係をどう思うかも別問題である。

 そう考えると展開として、この「あーくん」呼びは、最終的にアクアと重曹が結ばれるエンドに良い方向に働くのではないかと考える。

第九章映画編

 そしてようやく復讐の本題である映画撮影のスタートである。ここに関しても、謎の少女(オカルト要素)の登場やルビーに対するゴローバレなど展開は多々ある。しかし、いずれも重曹との関係を語る上でそこまで重要ではないと判断するため、端的にまとめていきたい。

 例えば、謎の少女。

 こちらは145話である。鶴の恩返しならぬカラスの恩返し。それ以上に語る部分はあまりない。

isoisogingin.hatenablog.com

 例えば、ルビーの恋心。

 143話でアクアがゴローであることが明かされる。その結果として、ルビーはアクアに対してキスや結婚を迫る。しかし過去の記事でも記述しているが、これはあくまでもルビーがアクアを通して「ゴロー」という存在を見ているに過ぎない。

isoisogingin.hatenablog.com

 既に本記事内にても何回か記載しているが、アクアは転生してきた。転生前はゴローであり、転生後はゴローでは為しえなかった経験をしている。そのため、1つの様に見えて、ゴローとしての自分と高校生のアクアとしての自分が混在している。

 そしてルビーはその前者にしか目を向けていない。

 これはアクアを好きというより、ゴローが好きという表現が的を得ているだろう。そして同様の発言が150話にてアクア本人の口からもされている。

 そんな中様々な要素が展開されつつも、アクアの復讐である映画撮影は進んでいく。しかし、復讐の計画を進めていくアクアに対して、闇落ちから引き摺り戻す存在こそ重曹なのだ。やはり重曹は連れ戻してくれる人。

isoisogingin.hatenablog.com

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Ⓒ 集英社 2024

赤坂アカ/横槍メンゴ『【推しの子】』146話 より

 以前の感想記事でも記載したが、このコマはあかねとの明確な対比だ。あかねは復讐をするアクアに対して、一緒に殺すという発言をした。一方で重曹は、アクアが死んだらあっという間に忘れる(だから死ぬな)。二人の性質の違いが表れた。

 そんな前向きで純粋な部分こそアクアにとっても眩しいのだろう。

 そして映画撮影の終了によって今度こそ、アクアの復讐はある程度の成果に結びつく。復讐が終わったという前提の基で思考されるのは、第六章同様に「普通の幸せ」なのだ。前世から引き継いでいるゴローとしての記憶や復讐心。それらが必要なくなった時、アクアに残っているのは普通の男子高校生としての感情である。

 そして、アクアが好きなのは重曹である。

 これが150話にて明言された。

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Ⓒ 集英社 2024

赤坂アカ/横槍メンゴ『【推しの子】』150話 より

今後の展開について考察する

重曹の卒業ライブと売り出し方

 重曹の卒業ライブは8月末つまりは映画撮影後であったのが、年末のツアーライブに変更になっている。元々は8月末だったのが意図的に後ろ倒しにされた可能性もある。

 加えて137話では、鏑木Pが重曹を天才役者として売り出すプランを壱護に持ちかけている。となれば、物語にて映画の公開と復讐の行方に加えて卒業ライブが描かれることとなる。

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Ⓒ 集英社 2024

赤坂アカ/横槍メンゴ『【推しの子】』137話 より

カミキの行動と復讐の結末

 実際問題、映画が公開されてカミキヒカルが社会的制裁を受けたらこの物語は終わるか?その答えはNoであると言いたい。犯人の探しの結果からカミキが批判される。それだけではカミキが行っている殺人は止まらず、継続していく。

 作中ではカミキヒカルが現在も殺人を犯していることが描かれている。そのため、最終的にはその行動を止めてアイと同様の被害を無くすこと。これが一つの大きな区切りとなるだろう。勿論、その背景や理由は多々あれど、大きな展開としてはこのようになると予想する。

 アクアが復讐を終えて「普通の幸せ」を実現するためには、その元凶を取り除く必要がある。その元凶とはアイを殺害したカミキのことである。つまり、社会的制裁だけでは、アクアの「普通の幸せ」は担保されない。次の瞬間、知り合いの誰かが殺される可能性だって想定される。

 そのため、カミキは社会的制裁に加えて、罪が明らかになったうえで法的制裁を受ける必要がある。しかし、現状ではカミキを罪に問うことが出来ない。物的証拠が無い為である。

 ここでカミキの殺人への動機を見出してみる。109話にてカミキの殺人の様子が描かれており、今をときめく天下の大女優である片寄ゆらを殺害した。その際の発言から窺えることは、「才能に溢れ、誰からも愛され、価値のある女優」を殺害することに意義を感じていることだ。

 この要素が当てはまる人物が思い当たる。

 そう、重曹もとい有馬かなである。

 『今日あま』や2.5舞台で役者としての才能を遺憾なく発揮し、その才能を世間に認めさせた。そして卒業ライブというのはアイドルにとってそのファンからの愛を一心に受け、惜しまれる花道である。それに加えて『15年の嘘』でも役者として演じている。

 つまり、鏑木Pが言う「天才役者として売り出す」が実現した場合、重曹はカミキヒカルの殺害対象となりうるのだ。そしてそれを提案する鏑木Pがカミキと面識があるというのもこの展開を裏付ける根拠となりうる。彼はカミキの本質を理解している可能性がある。

 そして、有馬かなをカミキが襲ったが最後、それは物的証拠となりうる。無事に社会的制裁に加えて法的な制裁も加えられる。

 この展開において、考えたいことは2つある。

 1つが、アクアがどこまで関与しているか、だ。アクアは『15年の嘘』という映画の撮影・企画の張本人である。物語上では、カミキへの社会的制裁が強調されているが、復讐への利用という観点から言えばアクアが関与している可能性もある。

 一方で、アクアが考えていたのは社会的制裁のみであり、後ろの法的な制裁のための展開は鏑木Pのシナリオである可能性もある。そもそも、アクアが150話にて復讐後の幸せについてある程度考えている時点で、アクアも関与している可能性は薄い。

 そして、誰も関与していないという可能性もある。つまり、アクアは社会的制裁を加えることが目的、そして鏑木Pも重曹を天才役者として純粋に売り出したい。その思惑が重なった結果、重曹が殺害対象になってしまったという展開だ。

 これが一番無難かもしれない。

 2つが、重曹は無事であるか、ということだ。これについてはメタ的な考察になってしまうが、無事であるというのが結論だ。ここで重曹が殺害された場合、カミキが法的制裁を受けたとしてもアクアは闇落ち確定である。

 そんなエンドは相応しくない。

 例えば、鏑木Pやアクアが関与している場合なら、そもそもが「釣り」であるために重曹の安全は保障されるだろう。

 問題は誰も関与していない場合である。未来軸のインタビューがどの時点で撮影されたものなのか分からないが、ある程度の映画の反響を受けての発言があることから、卒業ライブ後と仮定する。その場合、重曹はインタビューに参加しているので無事は保障される。この場合2つほど展開が想定される。

 1つはあかねが重曹を守るパターン。これも前提としてあかねは死なないはずだ。重曹であれあかねであれ、誰かがカミキに殺されたらその時点で復讐は失敗だろう。その上で、既にカミキの周辺を調べているあかねが重曹を庇うパターンである。

 ましてや、ここであかねが死ぬことがあれば、未来軸での「天才だってナイフで刺されればお陀仏」発言がパンチの効きすぎた発言になる。

 次に重曹が怪我を負うものの無事であるパターンだ。これが一番可能性が高いのではないか、と思っている。天才だって刺されたらお陀仏。それでも重曹は死ななかった。そう考えれば、未来軸での発言もある程度前向きな内容も含まれていることが窺える(不謹慎に変わりはないが)。そして死ななかったことでアクアとの約束を守る形にもなる。アクアが死んだら忘れてやると言った146話での約束。これは逆側の重曹が死なないことも含んでの約束だと思うのだ。だから、その約束を宣言通り守って見せる。

 こんな展開もあるのではないか。

 結論として今後の展開では2点が重要だと考える。1つめがカミキへの復讐は社会的制裁以外にも発生する可能性があること。2つめがその復讐の結末に重曹の卒業ライブが関与する可能性が高いこと。

 これらを念頭に今後も読みたい。

 今回はここまで。