2021年3月11日発売の『ヤングジャンプNo.15』では、『【推しの子】』が休載です。(作者様の体調不良等ではなく、赤坂アカ先生の契約上4週やって1週休む感じらしいです) そこで『【推しの子】』に関わる現段階までの情報を整理してこの時点での考察を書いていこうと思います。
*今回は、頑張ったつもりです。
最新36話の感想記事はこちらから。
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『【推しの子】』の構成について
良い漫画、良い作品と言うものにはいろんな要素が含まれています。絵が綺麗であったり、独特の味があったり、話の展開が衝撃的であったり、物語の辻褄が綺麗に合わさったり。その中で1つ、「衝撃的な展開」というものについて考えていきましょう。
漫画に限らず小説などにも通じるところはありますが、ある物語において「衝撃的な展開」と言えば以下の2つのタイプに分類できると私は考えます。
- 読者が予想しない展開
- 読者の想定を覆す展開
まずは「読者が予想しない展開」についてですが、そもそも物語の展開において、全く今まで明言されていなかったこと、何一つ記述が無かったことを明らかにされても読者は納得しません。読者は展開やキャラの心情に論理を求めます。なので、ここで言う「読者が予想しない展開」というのは作者が読者に気づかれないようにしていた情報を重大な情報と結び付けたり、何気ない情報を追加で重大な情報に結び付けたりすることです。簡単に一言で言うなら「伏線回収」という言葉がピッタリでしょう。予め作者の中であった設定や何気ないワンシーンが何かしらの真実と結びついている。それが明らかになった瞬間は正しく衝撃的でしょう。
しかし、私はもう1つ「衝撃的な展開」があると考えます。それは「読者の想定を覆す展開」です。1つめの「読者が予想しない展開」との違いとしては、作者が作為を持って読者に誤認させるという点です。気づかれないような細かい設定ではなく、前提として誤った情報や複数解釈可能な情報を与えることです。そして『【推しの子】』原作者である赤坂アカ先生は後者であるこちらを要所要所で用いる印象があります。
ここで、赤坂アカ先生の代表作である『かぐや様は告らせたい』について見てみましょう。例えば『かぐや様』5巻の第44話・第45話「花火の音は聞こえない」の前編・後編です。前編ではかぐやが家が厳しいという理由のために花火を見ることができないという風にサブタイトルを捉えましたが、後編では生徒会メンバーの助けもあり、好意を寄せている会長のとなりで花火を見るという状況になり、自身の鼓動の音が五月蠅くて聞こえないという何ともロマンチックなものに転換されました。正に衝撃的で美しい構成であったと言えます。
次に同様に『かぐや様』7巻の第67話「井伊野ミコを笑わせない」です。生徒会長の対抗馬として出馬したミコちゃんを全力で応戦することを決めた生徒会の面々。その覚悟を見ればミコちゃんを笑わせない=ミコちゃんに完全勝利するという風に捉えるでしょう。しかし、第67話後半でミコちゃんにはアガリ症があり、それが原因で笑られていたことが判明します。そこで会長は文字通りの意味で「ミコちゃんが笑われない勝ち方」をすることを決意します。これも物語の中で意味が逆転しますね。
ダブルミーニングと言って一つの言葉に二つの意味合いをつけることがあります。赤坂アカ先生は以上の例のように、ダブルミーニングを好んで使うことがあることは明らかです。
では、『【推しの子】』の話に戻りましょう。『【推しの子】』では第1話から第10話までの1巻収録分の話は冒頭の時系列が未来になっています。つまり、1巻の時点でこの物語の結末に近い部分が小出しではあるものの分かっているということになります。
しかし、この未来の描写、先程解説に挙げた「読者の想定を覆す展開」にピッタリではないでしょうか。そして、実際にそのようなギミックが使われているような描写が既に明らかになっているので、それを例に挙げながら説明していきます。『【推しの子】』6話「子役達」の冒頭の1コマを見てみましょう。
『【推しの子】』6話 より
未来の時系列の描写は各キャラクターへのインタビュー形式になっています。6話のインタビュー相手は重曹ちゃんです。重曹ちゃんはこのコマで「自分が天才ではないことに早くに気付くことができた」と話しています。そして、6話ではアクアが子供らしくない演技をすることで重曹ちゃんを圧倒するような展開があります。この話を読んだ時点で私含め読者の皆さんはこう思ったでしょう。「重曹ちゃんはアクアと出会って変わった」と。つまりアクアが重曹ちゃんの中での変化、「天才じゃない」という要因であったと読み取るでしょう。
『【推しの子】』28話 より
しかし、3巻28話「役作り」で炎上から立ち直りつつある「今ガチ」のあかねを見て重曹ちゃんは他人の不幸を喜ぶ感情があることを吐露します。同い年で女優という世界で天才役者である黒川あかねと自身を比較してきたのでしょう。つまり、重曹ちゃんの「天才ではないと気づかせてくれた存在」にはアクアだけではなく、あかねの存在もあるのでしょう。
ならば、このような展開は今後も考えられるのではないか?
長くなりましたが、これが今回の考察のメインになります。
未来描写の整理
1巻に収録されているうちに未来の描写が含まれているのは2話から10話です。それを下の表にまとめました。
これらの情報をまとめると、
- アクアやルビー、重曹ちゃんは活躍している
- 五反田監督の元で「映画」を制作
- 五反田監督や重曹ちゃんはアイの真相を知っている?
これらの3つの情報が得られるでしょう。つまり単純に理解するのであれば、アクアは役者として、ルビーと重曹ちゃんは「B小町」としてステップアップを重ねて活躍し、その中で信頼できる人たちに「アイの真相」を伝えた上でそのメッセージを込めた映画を製作するという展開が見えてきます。6話の重曹ちゃんのインタビューの続きでも「天才でもナイフで刺されればお陀仏」というアイの死を示唆する言葉があります。普通だったらここでアイの話が出てくるのはおかしいはずなのです。そこから考えると今後の展開で「アイの真相」を打ち明ける瞬間は来るのでしょう。
全世界の重曹ちゃん推しへ
ここで閑話休題。
私は誰が何を言おうと重曹ちゃん推しなのです。
そして、ここまでで整理した未来の描写はアクかなというカップリングを考える上で重要な情報が眠っている訳です。(カップリングが苦手な方、宗派が異なる方は読み飛ばしを推奨します)
正しく6話重曹ちゃんのインタビューのシーンになるのですが、アクアのことを「あーくん」呼びしているのが分かるでしょう。
『【推しの子】』6話 より
まぁ、つまり簡単に言いますと、「今と呼び方違くね?」という訳です。 いや、もうこれ完全に主人公の闇を一緒に背負っているヒロインの流れやん(浅い考え)。今はお互いに背中を向け合いながら支え合っているような状態ですが、それが正面から支え合う展開が来るのかなぁなんて思っちゃいますよね。
しかし、9話のアクアはかなり病み気味で「僕は誰も愛さない」なんて中二病満載の言葉を言うのです。ここだけ切り取ってしまうと、アクアは重曹ちゃんのことを好きになることはないのではないか、と考えることも出来るでしょう。
『【推しの子】』9話 より
しかし、私は重曹ちゃんが幸せになるための論理を発見しました。この未来の描写というのは、小見出しで「インタビュー〇」とインタビューであることとナンバーが描かれています。つまり、このインタビューは制作するであろう「映画」のその根幹に居たメンバーや彼らに影響を与えた、関わった人たちに取材をしたものであると考えられます。
『【推しの子】』28話 より
そして、アクアはメディアの上で、人と関わる上で「役」を演じることが自分の身を守ることであると知っています。つまり、監督や重曹ちゃんには気を許していても、それをメディアとして編集され公開されることが分かっている場所で明らかにするような性分ではないでしょう。
誰か真に気を許せる人が出来たときにそれを大っぴらに正直に言うのがルビーで、それを絶対に意地でも言わないのがアクアなのかなと、少し極端ではありますがそんな印象を持っています。
未来のアクアのインタビューはメディアを通して見られることを前提として「映画」の役に近いものを演じていると考えることも出来るのではないでしょうか。つまり、アクアのインタビューはメディア用のものであるという訳です。
重曹ちゃん推しの私としてはこう思わざるを得ません。
インタビューの記者は誰だ?
さて、今メディアを通して公開されるものであるという話をしましたが、それならばインタビューを「する側」が居るはずですよね。さらに言うならばミヤコさんに対しては居酒屋のような場所でのインタビューをしていますよね。それならば、インタビューをしている人もそれなりに映画製作のメンバーから近いところにいる人であると考えられます。
今現在、そのメンバーとして該当しそうなのは、あかねとMEMの2人でしょうか。しかし、今後も恐らく様々なくキャラクターが出てくると考えられるのでここで決めつけるには情報も無いので早計かなと思います。
そして、この制作陣の裏側のような動画という意味では既に「今ガチ」であかねの炎上を鎮静化させるために実施していますよね。そこから考えられるのは、今後の展開の積み重ねの集大成として、「映画製作編」のようなものになるのではないでしょうか。
アイのビデオメッセージ
インタビューの中でアイだけビデオメッセージですよね。勿論、アイは未来の時系列では故人であるため、そのような状況でしか現れることはありません。しかし、ビデオメッセージ、ビデオレターと言うものは送り手が居れば、受け手も居るはずですよね。そして、受け手と言うのはアクアとルビーの2人でしょう。つまり、映画を作成する前か後かは分かりませんが、2人がこのビデオレターを受け取る瞬間と言うものも必ず来るのでしょう。
『【推しの子】』10話 より
では、気になるのは「ビデオレターの内容は本当にこれで終わりか?」というものです。ビデオレターにしては内容は随分短いですよね。それがアイらしいと言われればそうかもしれませんが、少し別の考え方をしましょう。それは、アイのメッセージを更に編集したものであるということです。
そもそも、これは他のインタビューにも通じるのですが「インタビューは制作側の意図で切り取ることができる」媒体です。そしてこれについては「今ガチ」で大きなテーマとして扱われていました。つまり、このビデオレターに何かしら大きな真実が隠されていて、それを見て映画を作成したということや、逆に映画を製作する中でこれを発見し、映画の内容を変更するために制作陣のインタビューのような動画を作るということなどが考えらえれます。
そして、これは先程一番最初に説明した「読者の想定を覆す展開」(情報を誤認させる)にピッタリだと思うのです。まぁ、これを言い出すと正直全ての部分に当てはまるのでキリがないのですが、ここは重要なポイントだと思っています。
犯人は誰よ?
正直、犯人の方については情報が無さ過ぎて分からないというのが正直なところです。展開で考察するよりも、アイが黒髪なのに、二人は黒髪ではないという絵柄の部分で考察した方が情報が大きいくらいには情報が少ないです。
展開としても、「今ガチ」のPの言葉でアイは劇団ララライで変わったという情報がありますが、それがどこまで確定的かも分かりませんし、まだPの主観であると言えます。確定だとしても劇団ララライについてはあかねの存在くらいしか明らかになっていないので何とも言えません。
しかし、私が一つ思っていることは「本当に犯人はアクアらの父親か?」という根本の部分に対する疑問です。確かに論理的に考えれば、アイの出産を看たゴローを殺害し、アイが「アイに着て」と住所を伝えたら殺しに来た、という2点からアイの情報を知りえる父親が一番怪しいのです。怪しいのはそうなのですが、それはあくまでアクアの推理であって、とてもねちっこいストーカーのような奴が情報を傍受して実行に移したなんてのも考えられなくはないかなぁ、と。そして、この場合、復讐として制作された「映画」のメッセージも予想されるものから大きく異なるんじゃないかなと思います。まぁ、可能性は限りなく低いな、と思いますけど。無理やり感が否めないので。
最後に
あくまで一読者のふわっとした考察なので、1割でも当たっていたら私としては万々歳といったところだと思います。しかし、この一読者の考えが皆様に「良い」でも「それはありえない」でも何かしらの感想を持っていただけるものであれば幸いです。
新しい情報や繋がりが見えれば、また別の記事にするか、追記するかで今後とも『【推しの子】』を楽しんでいきたいと思います。あと、重曹ちゃんしか勝たん。