葉のブログ

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【感想と考察】『僕の心のヤバイやつ』Karte.85「山田は僕が好き」【漫画】

 2021年11月30日にマンガクロス | 秋田書店の新作漫画が無料で読める! (mangacross.jp)『僕の心のヤバイやつ』最新85話「山田は僕が好き」が更新されたので感想と考察を書いていこうと思います。
 ああ"ぁ"
~。今話は最高だ。

 前回の感想記事はこちらから。

isoisogingin.hatenablog.com

 

 最新6巻が1月7日に発売予定です。

 

85話「山田は僕が好きだ」感想と考察

ナンパイにとっての"儀式"

告白の意味

 告白

 先日、こんなチクチク言葉がTwitterで流れてきた。

 心に刺さる言葉であるが、実際真理である。

 勿論、これが全てではないだろう。

 しかし、多くの人は『告白』という行為の前に、某告らせたい漫画の如く心理戦を繰り広げ、それが是か非かは置いておいて、相手の気持ちをある程度予想することだろう。

 その言葉を聞くまで、答えは分からない。

 それでも、その答えをある程度予想はできてしまうのだ。

 それが所謂『脈アリ』『脈ナシ』というやつだ。

 それを踏まえてバズっている投稿を考える。

 恐らく告白と一言で表しても、その意味は異なるだろう。

 『脈アリ』なら告白は確認作業になるだろう。

 では、『脈ナシ』ならどうだろうか?

 全員が一発逆転で付き合えることを夢見る訳ではない。

 こんな言葉を知らないだろうか?

 行動非行動の法則

 要約すれば「やらない後悔よりやる後悔」。行動しなかったことによる後悔は行動した結果の後悔より大きくなるというものだ。

 だから、『脈ナシ』での告白には①本気で一発逆転を狙うもの、と②フラれるのを前提とした上で、自分の中で区切りをつけるためのものの2種類があると考えられる。

 

 結局、告白はシュレディンガーの猫と箱なのだ。箱を開けるまで(答えを聞くまで)結果は確定しない。

 ましてや現実の告白の対象は鉄の箱ではなく人間である。箱を開ける前に透けて見えるもの、その程度も十人十色であろう。

 

ナンパイの告白

 山田は、その中でも中身の透けやすい箱だ。

 純粋で裏表がない。市川とは両片想いのような状態を続けていたが、多くの人にとっては「市川のことを好きなのはバレバレ」な状態であろう。

 そして、それはナンパイも例外ではない。

 

 だから、ナンパイの告白は上述した中での「自分の中で区切りをつけるための告白」なのだ。

 山田が市川のことを本気で好きで、よく見ているように、ナンパイも山田のことが本気で好きなのだ。だから山田のことも良く見ているし、山田が誰を好きなのかも知っている。

 卒業式が多くの部分で中身の意味が感じられずとも、やること自体が大切であるように、たとえ振られたとしても「告白をする」こと自体が大切なのだ。

 それは山田への恋心を抱いてしまった自分自身の為。

 そして好きになった相手に対して誠実であるために。

 


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『僕の心のヤバイやつ』Karte.85 より

 

 チャラい嫌な奴という描写が所々で為されているが結局ナンパイは良い奴なのだ。

 そしてそれを陰から見守る彼女仮の先輩も、ナンパイの想いに正面から答える山田も、本当にこの作品に出てくる全ての人物が純粋で愛おしく思える。

 改めて、そう感じた。

 

ナンパイの告白と山田の告白

 ナンパイは"儀式"の場所として保健室を選んだ。

 否、場所はどうでもよく「市川の居る場所」を選んだのだ。

 

 ナンパイがサッカーを好きなことを山田が知っていることに、驚きを受けつつ、山田が頑張る姿を心から尊敬していると言うナンパイ。

 その感情は傍で聞いている市川も同意してしまうものだ。

 

 第二ボタンを受け取ってほしいというナンパイの古風な告白に、山田は正面から答える。市川のことが好きだという自身の感情に加えて、ナンパイが自分のことを好きでいると言う言葉も直接正面から受け止める。

 だから、正直に「好きな人が居る」と言う。


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『僕の心のヤバイやつ』Karte.85 より

 

 市川から貰ったワン次郎。送辞のために市川に預け、市川を支えたそのお守りは今度は山田の手の中で、山田を支える。

 山田の手の中にナンパイのボタンが入る余地はないのだ。


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『僕の心のヤバイやつ』Karte.85 より

 

 答えを聞いた時点で、シュレーディンガーの猫は確定する。

 だからナンパイの「式」はここで終わりなのだ。

 

サブタイトル「山田は」

 ナンパイが山田のことを見ているように、山田が市川のことを見ているように、また市川も山田のことをよく見ている。

 だから気づいてしまうのだ。

 正確には気づいていたけど、知らぬフリをしていたのだが。

 山田は好きな人を想って泣く。

 本気で好きだからこそ、「言葉」にできない。

 好きだからこそ、怖い。

 溢れるような純粋なその感情を山田はかつて見たことがある。

 

 流石に市川でも見ないフリはもう出来ない。

 山田は市川のことが好きなのだ。

 

 本作は本編では基本的に市川の一人称視点で語られる。だからサブタイトルも「僕は~」で統一されている。

 例外的に74話のサブタイトルが「山田は僕を」となっている。

isoisogingin.hatenablog.com

 

 バレンタインチョコを渡す際、言葉にしようとしても上手くできなかった。市川のことを想って泣いた姿を見て、市川も察した。しかし、言葉になっていないその感情を一度置いておいたのだ。

 置いておくことで確定させなかった。

 だからこそ、今話は「山田は僕が好き」なのだ。

 ナンパイの告白への答えはある種山田から市川への告白ともなった。

 「好きな人が居る」という言葉として確定したその感情の所在を市川は知っている。

 

ナンパイの気遣いとその後?

 告白を終えたナンパイはすぐに保健室を出る。保健室前では彼女先輩と関根さんが保健室の先生が入るのを止めているところであった。

 ナンパイは先生にもう少し入るのを待つように促す。

 これは告白後、言葉として確定したその感情を抱える山田と市川に気を遣っての事だろう。マジでナンパイいい奴。

 しかし、その「二人っきり」の空間から秒速で市川が、続いて山田が出てくるのだ。

 目を合わせるだけで真っ赤になる市川と山田。

 その姿に外野三人はあきれ顔をするのである。


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『僕の心のヤバイやつ』Karte.85 より

 

 恐らく本当にナンパイの告白後すぐに出てきたのだろうが、可能性として保健室で何かしらの言葉を交わしたりしたことも考えられる。山田の答えを聞いて市川が想いを伝えたりしてるかもしれない。

 

 何はともあれ公式の煽り文でも「両片想いは終わりを迎え、そして2人は…」とある。

 この数秒に何かあったのか、それとも単純に気まずくなったのか。

 そして今後の二人の関係がどのようになっていくのか。

 今話はナンパイにとっての儀式である共に、この物語全体を通しても一つ重要な転換期として意味のあるものだろう。