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【感想と考察】『僕の心のヤバイやつ』Karte.84「僕は大丈夫」【漫画】

 2021年11月16日にマンガクロス | 秋田書店の新作漫画が無料で読める! (mangacross.jp)『僕の心のヤバイやつ』最新84話「僕は大丈夫」が更新されたので感想と考察を書いていこうと思います。

 前回の感想記事はこちらから。

isoisogingin.hatenablog.com

 

 最新6巻が1月7日発売であることが発表されました。

 

 その前に5巻を買ってない!って人はこちらを要チェックです。

 

Karte.84「僕は大丈夫」感想と考察

やはりお姉

 送辞の原稿を忘れた市川。

 最後の希望であるお姉に電話をして、送辞の原稿を持ってきてもらおうとする。

 

 お姉の「暗記してないの!?」という言葉から、お姉のスペックの高さが窺える。

 しかし、学校の方向が分からず道に迷ったり、卒業式中の学校に入るのに手間取ったりとなかなか市川の元へたどり着けない。

 カッコいいのは最初の一瞬だけ。

 やはりお姉はお姉である。


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『僕の心のヤバイやつ』Karte.84 より

 

山田の存在

 原稿忘れに気づき挙動不審な市川を山田は気にかける。

 しかし、それは市川としては一番避けたい事態なのだ。

 

 そもそもの発端は、「胸を張れる自分」を山田に見せることだ。

 モデルとして仕事を頑張る山田の姿に魅かれ、ナンパイが山田のことを本気で好きだと知って、だからこそ、誰にも恥じない姿を見せなくてはいけない。

 

 同様とは逆に山田には何でもない素振りを見せる市川。

 明らかな強がりである。しかし、たとえ本心とは違くとも今はその強がりを貫き通さなくてはいけないのである。

 

 そんな市川に山田は一言。

 「大丈夫」

 そして、ネーミングセンスゼロのワン次郎(市川が渡したお土産のキーホルダー)をお守り代わりに市川に渡すのだ。


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『僕の心のヤバイやつ』Karte.84 より

 

過去の自分と今の送辞

 卒業式中、やはり無理だと先生の所に行くが、むしろ引き受けてくれたことが嬉しいと褒められてしまい、言い出せる雰囲気ではなくなってしまう。

 原稿の無いまま登壇する時間が来てしまう。

 

 小学校の頃は壇上が怖くなかった。

 他人の目が怖くなかった。

 

 それは恐らくあらゆる経験をして、あらゆることを知ったから。

 「知る」という事は素晴らしいことであると共に、知れば知るほど分からないものが出てくる。これは本作のテーマの一つでもあると思われる。

 恋愛なんて、知れば知るほど分からないのだ。

 ましてや、相手の本心なんて。

 

 それでも、自分を信じてくれる山田や先生、何より「やろう」と思った自分自身のためにも、送辞から目を逸らす訳にはいかないのだ。

 市川の逃避行動にはある種の自己防衛的な本能が付随する。

 山田とも距離感を測りかねるのも、昔趣味を否定され傷ついた経験から、再び傷つく可能性の有ることから自身を守ろうとする自己防衛的な行動だ。


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『僕の心のヤバイやつ』Karte.84 より

 

 そう、市川は自分が好きなのだ。

 自分なんて、と自己否定を繰り返すことで「自分」を守ってきた。

 

 しかし、それは自分を信じてくれる山田や先生の事も否定することになる。

 そして、なにより「やろう」と思った自分自身への否定だ。

 

 先輩を送り出す言葉。

 本心とは真逆の言葉なんて、市川にとっては日常茶飯事である。

 

 それでも、自分を信じた自分のために、市川は想いの丈を喋るのだ。

 しっかりマイクを通して言葉が聞こえるように、そしてほんの少しだけ本心を交えて。

「大丈夫」

 卒業式前に山田にかけてもらった言葉に答える形で。 

 

 それは卒業生へのメッセージであり、山田へのメッセージであり、ナンパイへのメッセージであり、何より自分自身へのメッセージであるのだ。


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『僕の心のヤバイやつ』Karte.84 より

 

卒業式第2ラウンド

 送辞を終えた市川は全力で戦ったジョーの如く真っ白となりそのまま保健室へ行くことに。


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『僕の心のヤバイやつ』Karte.84 より

 

 心配した山田が市川の元へ来るのだが、

 なんとナンパイが山田を探してやってきたではないか!

 

 第2ラウンド、ファイっ!!

 

ナンパイも憎めない

 相も変わらず本作に出てくる全てが憎めない。愛おしいのだ。

 それは何故か。思春期の学校という人生の中でも特殊な環境の中でそれぞれが全力に、本心に正直にもがくからなのだろうか。

 ナンパイも例外ではない。

 女たらしのヤリ〇ン野郎では終わらないのだ。

 どれだけ女たらしでも、以前からずっと山田へのアプローチを続け、他の女子生徒からの告白も断り、そして卒業式に告白するために山田を探した。

 ナンパイも市川と山田の関係には気が付いている可能性はある。

 それでも可能性がゼロではない以上諦められないのだろう。

 言葉としてはっきり結論がでるまで諦められないのだろう。

 

 だから、ナンパイもそのまま卒業するのではなく「一歩踏み出す」のである。

 市川が送辞で読んだように、その行為にどれだけの勇気がいるか。

 

 だから、私はこの作品に登場するキャラ全員が好きなのだ。