毎度お馴染み神回。
色んな描写に今までの積み上げが見える。
普通に毎週泣ける。
2022年10月11日にマンガクロス | 秋田書店の新作漫画が無料で読める! (mangacross.jp)で『僕の心のヤバイやつ』最新106話「僕らは負けている」が更新されたので感想と考察を書いていこうと思います。
前回の感想記事はこちらから。
106話「僕らは負けている」感想と考察
足立の愛おしさ
さて、103話から始まった体育祭編。
当然、足立からの勝負が遂に行われる今話が佳境である。騎馬戦は意図せず雨の中での決戦となる。山田を好きな者同士のプライドバトル。
そのように想定された勝負は意外な方向へ転がる。
クラス替え以降、恋仲であると噂される市川と山田。そもそも山田の距離感が近いこともあり、その感情が周囲へバレバレであることは以前から示唆されている。
関根の言葉を借りるのであれば、「知ってる」。周囲へ市川と山田の両片思いがバレバレであることは53話の大晦日回時点で明かされている。一部鈍いキャラが居るのはその通りである。しかし、本記事でも足立が察している可能性について幾度が言及した。
『僕の心のヤバイやつ』Karte.53 より
そして、その考察は当たった。
足立も気づかないはずがないのだ。山田が好きだからこそ、山田のことをよく見る。しかし、当の山田は足立ではなく市川を見ている。そして市川を良い奴だと認めている。
本当に『僕ヤバ』の登場人物は残さず全員愛おしい奴らなのだ。どいつもこいつも良い奴しかいない。それは4巻の巻末で作者の桜井のりお先生が記述する「2人を取り巻く人々や環境、過去なども愛おしいものにしたい」という想いそのものである。
足立が良い奴であるように、市川も良い奴なのだ。お互いに純粋に想いをぶつけ合う。だから、まるで諦めているような発言をする足立に本気を出すように声を捻り出す。
市川も足立が山田を好きなことは知っている。
しかし、譲れる想いではない。だからこそ、正面から泥臭くぶつかりたい。本音を言えば、山田の前で格好つけたいだけかもしれない。それでも想いをぶつけてきた相手に想いをぶつけないのは違う。市川は人の想いを正面から受け止め、返すタイプなのだ。
結果として、両者騎馬から崩れ落ちる形となる。市川を心配する山田の姿を見て、足立は勝負の負けを確信し、足立に帽子を取られたことで市川は試合の負けを確信する。
二人とも負けたのだ。
お互いに口から出る「ちくしょう」という文句は、サブタイトル通り「僕らは負けている」ことを示す悔しさの象徴である。
『僕の心のヤバイやつ』Karte.106 より
山田のお弁当
騎馬から崩れ落ちた足立と市川は保健室へ行く。(市川姉を見てはしゃぐ姿は足立の残念らしさである)悔しがる市川と二人きりとなった山田はお弁当を渡す。
その中身は市川一人のために用意された、何人前か分からないほど圧倒的な量のお弁当である。お弁当丸々卵焼きであったり、おにぎりの具がから揚げであったりと山田らしさ全開である。
104話の筋トレ回で市川が甘い卵焼きが好きと言ったために作った山田作の卵焼き。59話の調理実習回では卵をまともに割れなかった山田の姿が描かれている。それを考えると如何に山田がお弁当作りに努力したかが伝わってくる。
『僕の心のヤバイやつ』Karte.59 より
そんな山田が作った卵焼きに市川は心から「うま」という言葉が零れる。そして美味しそうに食べる市川の姿をまじまじと見つめる山田の姿を見て、市川は勘違いするのだ。
『僕の心のヤバイやつ』Karte.106 より
俗に言う「あーん」である。
二人のこんな恋人らしいいちゃラブ(まだ恋人ではない)が描かれるのは、もっと先であると思っていたために、読んでいてニヤニヤが止まらん。
106話も安定の神回である。
確定演出。
間違いはない。
額の文字と最後の台詞
さて、前回記事で考察ポイントとなった、市川の額に描かれた文字。その正体は「きょう」。つまりは山田が市川を二人きりの時に呼ぶ名前だ。
(山田の独占欲が見える。)
しかし、咄嗟に「きょう」呼びが出ることがある。例えば今話の市川が崩れ落ちるシーン。山田は「きょう」と叫び、足立の目には市川の額に書かれた文字が映る。もしかしたら、これが決定打になったのかもしれない。
『僕の心のヤバイやつ』Karte.106 話より
そもそもこの呼び方は91話の終業式回で山田が賭けに勝って決まったものであるが、始まりは44話のLINE交換回まで遡る。LINEの名前が「きょう」であることから、今日明日に紛れて名前呼びをする描写が多くある。
『僕の心のヤバイやつ』Karte.41 より
そして91話で名前呼びすることになった雰囲気であったが、そこからなかなか名前呼び出来ない期間があっての今である。
『僕の心のヤバイやつ』Karte.91 より
で、あるならば、当然今話の最後の台詞、「今日かっこよかった!」は同様にダブルミーニングなのだ。体育祭を示す日付である「今日」と山田のみの市川の呼び方「きょう」。これら二つを合わせて「かっこよかった」と恥ずかしながら言う。
全ての読者が立って拍手しただろう。
今話は今までの積み重ねが分かりやすく表現されていた。そして、それ故に彼らを取り巻く全てのものが愛おしく思えるのだ。私も一読者として、『僕ヤバ』の虜であるのは間違いない。
次回以降も期待である。
主のイチオシシーン
山田にしては珍しい、作った笑顔。
次々と飛んでくる誉め言葉に顔を赤くしているが、その前の微妙な表情。他にも見どころが多すぎる今話であるが、この表情は推せる。
『僕の心のヤバイやつ』Karte.106 より
次回更新について
『僕の心のヤバイやつ』は、マンガクロス | 秋田書店の新作漫画が無料で読める! (mangacross.jp)で隔週更新である。次回更新は2022年10月25日予定である。