2022年8月30日にマンガクロス | 秋田書店の新作漫画が無料で読める! (mangacross.jp)で『僕の心のヤバイやつ』最新103話「僕は回想した」が更新されたので感想と考察を書いていこうと思います。
前回の感想記事はこちらから。
103話「僕は回想した」感想と考察
お決まりのフリ
さて、バレンタイン回、誕生日回と何かと刻みがちな『僕ヤバ』。
当然の様に体育祭も残り19日18時間23分を刻んでいく。
『僕の心のヤバイやつ』Karte.103 より
元気モリモリ守屋でーす、の新たな担任。守屋先生。
そんな守屋先生の個人的な事情(教師間のマウント合戦)のために、市川や山田が属する3年1組は体育祭への積極的な参加が求められる。
市川はこのようなイベントに消極的な部類である。
そして、市川も山田も運動は苦手なのだ。
言葉は難しい
『言葉は、どうしてこんなに不便なんだろう』
Karte.103最後の煽り文から引用した。
思い返せば、本作の1つの主題であるかもしれない。
想いを伝えられない二人の姿。言葉足らずで浮いてしまった過去がある市川。本作の節々で現れる「言葉の難しさ」は今話でも健在である。
市川を騎馬戦の騎手にしたいという名もなき3人。
その際に放った「チビ」という言葉。
その言葉に市川ではなく山田が思わず反応してしまう。
恐らくこの言葉も否定的な意味を込めて使われたものではない。単純に騎馬戦というスポーツの構造上、騎手は背の小さい人が担ぎやすいのだ。
その後の「度胸もある」という言葉を言っていることから、むしろ3人は市川を好意的に見ていることさえ考えらえる。
(同時に山田との関係も疑ってそうな雰囲気はある)
しかし、同じ言葉に同じような感想を持つとは限らない。
想い人が身長を気にしていること、身長を伸ばそうとしていることを知っている山田にとって「チビ」は受け入れられない言葉なのである。
『僕の心のヤバイやつ』Karte.103 より
伝えられない言葉
なぜ市川と山田は告白しないのか。
それは不安や緊張で言葉が喉を通らないから。
前項で記載したように言葉は同じ解釈をされるとは限らない。しかし、それ以上にそもそも言葉を発するさえ叶わない時もある。
市川と山田が好意を伝えられないことがその典型例である。
その言葉を他の感情が邪魔をするのである。
しかし、一方で感情に後押しされて言葉が出ることがあるのも事実。
過去の体育祭では、山田を庇った市川を誤解されないように、山田は素直に言葉を出している。この時から、市川も山田も今と変わりないことが窺える。
『僕の心のヤバイやつ』Karte.103 より
そして、その姿は市川が山田を尊敬するように他の人にも映る。
市川が山田を好きなように、足立だって山田を想うのだ。
しかし、足立と市川には現実的で残酷な距離がある。山田と市川は何時からか仲良しで、その想いを隠せないほどに好き合っている。一方で足立は、市川よりも先に好きになったかもしれないのに、所詮山田と市川の取り巻き。脇役なのだ。
クラスの女子に疑われ、騎馬戦を誘う男子に囁かれる。
二人が両片想いなだけで、外野はその関係を認識しているだろう。
そしてそのような関係は距離が近いほど、ありありと見えるのだ。バヤシコが鈍いだけである。他の人は恐らく全員感づいている。
その関係に気付いていて、その距離感を知らされる。
(このコマの描写、好きすぎる)
足立は何時まで経っても二人の様にはなれない。
BSS。僕が先に好きだったのに。
『僕の心のヤバイやつ』Karte.103 より
でも、現実問題として、市川と山田の関係は覆らない。
だから足立は今までで一番マジメな顔つきで宣戦布告するのだ。
体育祭。騎馬戦でのタイマンで勝負しよう、と。