葉のブログ

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【感想と考察】『僕の心のヤバイやつ』Karte.71「僕は山田と」【漫画】

 2021年5月18日にマンガクロス | 秋田書店の新作漫画が無料で読める! (mangacross.jp)『僕の心のヤバイやつ』最新71話「僕は山田と」が更新されたので感想と考察を書いていこうと思います。先に言ってしまいますが「遂にここまで来たか」と感慨深い気持ちです。

  前回の記事は以下のリンクから読めます。

isoisogingin.hatenablog.com

 

  既に告知がありましたように7月8日に『僕の心のヤバイやつ』の最新5巻が発売予定ですのでこちらも要チェックです。特典版もあるようなので予約しておきましょう!

Karte.71「僕は山田と」 感想と考察 

山田の両親の感触 

  フィードバック

  人間は生活のあらゆる場面で自身について評価を受け、それを自身の行動や思考に反映させたうえで生きている。そしてそれが重要な人物からのものであったら気になるものだ。

  さて、山田家での女性陣+山田の両親に囲まれた中でのチョコ作りを乗り越えた市川。帰宅後、弟のハーレム()のような状況に騒ぐ姉から逃げる市川を待っているのは山田の電話であった。山田の両親については市川のことを悪くは思っていないようで、特に山田ママは山田と市川の関係に気づいているような意味深な発言をしている。しかし、山田パパが市川のことを「山田」くんと認識していたのは、以前市川が山田のジャージを借りて帰った時にすれ違っていることを覚えていることであり、もしかしたらひと悶着あることが考えられるだろう。しかし、前話で山田の両親に嘘をつかず、正面から向かい合うことを決めた市川であるから、きっとそうなっても山田パパに真実を正直に話して丸く収まるのだろう。

  この様に、山田から聞いたところのフィードバックの結果は上々であると言えるだろう。「また来てね」という山田の言葉に対して、「当分はいいかな」と答えて電話を終えるのも市川らしいと言えるだろう。


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『僕の心のヤバイやつ』Karte.71 より

 

市川の心中 

  姉からの「告らないの?」という疑問に、「まだ自信がない」と答える市川。本話では、市川の最近の気持ちが整理されていた。

  市川の中では、山田は「陽の者」に対して自身は「陰の者」という対立構造が存在し、その間の溝が大きいということが分かる。山田が自分のことを好きだと100%言えるわけではない。所々で「好きかも」と自惚れることができるようなことがあるのは市川自身も気づいていて、それでも可能性が99%なら残りの1%という「怖さ」があるのだ。恋愛に絶対はないのである。

  恐らくこの作品を読んでいるの中には生徒ではなく、大学生であったり社会人であったりする人も多いであろう。その人たちは市川と山田の関係を見て恥ずかしくなると共に、「行け! あと一歩だ!」と応援する人も少なくないはずだ。そして読者のその気持ちを代弁してくれるのが、市川の姉なのである。

 二人は中学生であるからこそ、これから先様々な「変化」が訪れるのだろう。この作品の中でも市川が声変わりをしたり、山田がアイドル雑誌に掲載されたりと変化は見られる。そして様々な変化が訪れる真っ只中の思春期であるからこそ、山田と市川がある日突然疎遠になった時、市川には忘れられるのだろうという「怖さ」もあるのだ。

 告白してフラれるのも「怖い」し、一方で告白しないまま疎遠になるのも「怖い」。その悩みに対して、お姉ちゃんは「結局は自分がどうしたいかだよ」と市川の背中を押すのである。そして、市川はするりと言葉が出てくるのである。

 「付き合いたい」

 その後恥ずかしくなるのは置いておいて、その言葉が口から外に出ただけ、一つ進んだと言えるのであろう。今まではその自身の好意すらも否定していたのだから。


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『僕の心のヤバイやつ』Karte.71 より

 

 今までは言葉に出来なかった「僕は山田と」のその先にあったのは「つきあいたい」という素直な想いであり、その言葉を紡いだというのは決意の表れでもあるのだろう。

 

市川の小さな一歩

  ずっと喉の中で呑み込んでいた言葉が外に出た。そして口にしてしまえば、それは自分自身でも認めざるを得ない偽りなき想いなのである。市川にとって初めての恋愛であろう。告白するのも告白しないのも「怖い」。そのいくつもの思春期らしい葛藤の中で足掻く市川にも漸く一つの答えが出たようだ。

 明日、二人が同じ関係を迎えられるとは限らないから、この先変化が訪れ様々な世界が待っているから。だからこそ市川は小さくとも小さな一歩を踏み出すのである。自分が何をしなくても変化していく世界。その中で選択するのは「しないでする後悔」ではなく「してする後悔」であった。

 結局作った義理チョコをクラスの男子へあげるかどうか悩む山田に対して、山田の腕を掴みながら「やめたら?」と独占欲つよつよの言葉を投げかけ、山田も嬉しそうに肯定するのである。 


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『僕の心のヤバイやつ』Karte.71 より