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【感想と考察】『その着せ替え人形は恋をする』14巻【漫画】

 2023年11月25日に『その着せ替え人形は恋をする』最新14巻が発売されました。『着せ恋』は半年に一度の刊行ペースなので、久しぶりの記事更新になります。

 前13巻、12巻の感想記事も書いています。

 どうぞよしなに。

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14巻感想と考察

14巻の前提条件

 さて、13巻までの大まかな展開をおさらいする。前13巻では、『天命』のハニエルの衣装を五条が作り上げ、それを海夢がコミケで披露した。物語の節々でコミケなどのコスプレ撮影におけるルールが描かれていたことも記憶に新しい。

 そのような中で一つ14巻を読むうえで前提にするべきことがある。それは、五条が海夢に対する恋心を自覚したことだ。キッカケはコミケで周囲の視線を独占する海夢の撮影会の様子を見たことである。

 自分が作った最高の衣装。そしてそれを超えた表現ができる最高の被写体。そのため五条は海夢に対して「虜にさせるように振る舞って」と懇願した。にも関わらず、五条はその光景を見て、独占欲だとか嫉妬が勝ったのだ。

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Ⓒ スクエアエニックス 2024

福田普一『その着せ替え人形は恋をする』99話 より

 この感情をキッカケとして、14巻では五条と海夢の関係が少しギクシャクする。そのため、前提条件として再記した。

雛人形と頭師

 コミケを終えた五条は忙しくなる。コミケは年末。そして、年を超えれば2か月ほどで雛祭りのイベントがある。そして、そのイベントは頭師として五条は是非とも観に行きたいのだ。そしてそこに海夢も同行することとなる。

 そんな雛祭りイベントから帰る最中に五条の口から語られるのは「じいちゃんが生きている内に雛人形を作れるようになって見て欲しい」というものだ。その言葉を五条は「おじいちゃんの体調が悪い訳ではない」と訂正する。

 この言葉だけでは誤解を生むには足りない。しかし、怒涛の展開で上述した五条の台詞は誤解を招くこととなる。それが五条の過去回想の”のんちゃん”の登場である。のんちゃん自体は関係ないのだが、一緒にいた従姉妹のお姉さんが頭師のことを「練習をしなくてはいけない」と言う。

 これによって五条と海夢の間に誤解が生じてしまう。五条の台詞を「頭師の練習が必要なのに衣装製作で時間が取れない」と解釈してしまうのだ。そして、それは海夢にとってショックなことだ。自身の衣装製作のために五条の本来やりたいことを失うことは避けたい。

 こうして二人のギクシャクが始まる。

五条の過去との向き合い

 海夢との関係は置いておいて(回りまわって関係あるが)、五条は過去と向き合う必要がある。というのも、のんちゃんは幼少期に五条に対して雛人形を好きなことを「気持ち悪い」と言い放った張本人だ。

 そこでモヤモヤを抱える五条。そんな彼は偶然にも衣装製作でお世話になっている宇佐見に出会う。年功者である宇佐見から伝えられる言葉は、受け入れられるかどうかは別として伝える事が重要というもの。

 そしてその事実は、五条が海夢に出会って気づいた事実でもあるのだ。海夢に貰った言葉があるからこそ、五条は衣装作成を始めたし、頭師としても一人の人間としても成長した。

 だから、五条は行動に移す。

 まずはのんちゃんとの邂逅。

 こちらは、意外にもアッサリと解消する。五条は今でも雛人形が好きなことを告げ、のんちゃんも過去の発言に対して謝罪をする。結局、人間関係の大半は意外と何とかなるのかもしれない。ただ、何とかするための一歩を踏み出す勇気が必要なのだろう。

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福田普一『その着せ替え人形は恋をする』106話 より

海夢への告白

 過去を清算した五条はもう一つの意思表示に行動を移す。それは、雛祭りイベント以降、距離が出来ていた海夢に対してである。

 上述した通り、海夢は「衣装製作が五条の邪魔になっている」と誤解をしている。それに対して、五条は衣装製作を通して自身が成長したこと、全部自分で決めてやっていることを伝える。そしてそれが自身の成長に繋がり、海夢にも感謝していると言う。

 だからこそ、海夢は納得できない。

 なぜなら、彼女はコミケ会場で怒るような表情をしている五条を見ているからだ。だから、自身の存在が邪魔になっていると思い、距離を置く判断をした。海夢視点では、その表情の理由が分からない限り、五条を信頼するのは難しい。

 だから、五条は素直に告げる。

 のんちゃんへの発言と同様である。今の五条は「受け入れられるかは別として伝える」状態のゾーンに入っている。だから海夢への告白なんてお手の物なのだ。「俺は喜多川さんが好きなんです」。真っすぐに想いを伝える。

 そんな五条の一世一代の告白。それに対する海夢の回答は五条を後ろに押し倒す程の勢いの良いキスである。しかも大量のラブコール付き。先ほどまでのシリアス展開が吹っ飛んでいくような、反動のような。そんなラブラブ展開のスタートだ。

 そして、一頻りラブコールを叫んだあと、2度目のキス。しかも今度は割とディープな方である。

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Ⓒ スクエアエニックス 2024

福田普一『その着せ替え人形は恋をする』107話 より

このラブラブが一生続いてほしい

 誤解が解けて、晴れてお付き合いが始まった五条と海夢。そこで語られるのは海夢のコミケの感想である。注目を浴びるのは嬉しかった。それでも自分には違う。海夢がやりたいことは友達と一緒に、好きなコスプレを目一杯楽しむことなのだ。

 そして、その「好き」を作ってくれるのも五条と彼が作った衣装なのだ。だから、海夢の「好き」は五条と切っても切れない関係になっている。そんなことを、五条に抱きつきながら語るのである。

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Ⓒ スクエアエニックス 2024

福田普一『その着せ替え人形は恋をする』108話 より

 そして、五条も五条である。海夢に対して「奇麗」だと伝える。五条の「奇麗」と言う言葉は大切なものであり、特別なものにしか形容されないことは海夢も知っている。だからそれを聞いて、更に海夢のラブ度は上がっていくのだ。

 そして、そこから続くのは糖分過多になるほどのラブコメ展開である。恥ずかしがりながら「奇麗」と言う五条。帰ろうとする五条に引っ付く海夢。じいちゃんを盾にされて拗ねながら手を放す海夢。帰りに手を振りながら投げキッス海夢。

 これまでの反発かの如く、怒涛の勢いて元の作風に戻った。となれば、本作の最大の山場は超えたと言っても構わないのだろう。もうこのイチャラブを一生描いて見せてくれねぇか。

主のイチオシシーン

 最後の他人に言えばのろけにしか聞こえないであろうやり取りを繰り広げる五条と海夢。付き合うことが出来た反動か、完全に海夢が幼児退行している。五条も彼氏ではなく完全にお父さんの喋り方である。

 これはこれで凄い破壊力だった。

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Ⓒ スクエアエニックス 2024

福田普一『その着せ替え人形は恋をする』109話 より