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【感想と考察】『その着せ替え人形は恋をする』12巻【漫画】

 2023年9月25日に『その着せ替え人形は恋をする』最新12巻が発売されました。

 前11巻、10巻の感想記事も書いています。

 以下よりご覧ください。

isoisogingin.hatenablog.com

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12巻感想と考察

『天命』ハニエル」の衣装づくり

 さて、前回11巻で次回の海夢のコスプレは『天命』という作品のハニエルに決まった。厳かかつ独特な空気感を纏うそのキャラを表現するために、五条は衣装の図面作りから着手する。

 トントン拍子に進んでいくコスプレ作り。しかし、ベースとなる衣装の布地だけが見つからない。以前からそうであるが、五条は衣装作りの際に作品を読み込み、自らの考察と解釈の上でコスプレ衣装を製作している。

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スクウェア・エニックス 福田普一『その着せ替え人形は恋をする』89話 より

 その拘りこそがモノづくりの道で生きる人間の根源であることは、私もよくわかる。結果として、五条が衣装を作り始めるのと並行して海夢が布地を探し回り、五条と連絡を取る方針で衣装作りが進む。

五条の人間関係

 学校祭を通じて、クラスの人間とも打ち解けた五条。加えて最近では海夢とのコスプレ衣装作りを通じて、そちらの方面でも人間関係が広がってきている。

 コスプレの小道具作成に旭さんと待ち合わせをする五条。

 待ち合わせが学校の帰りだったこともあって、同級生とコスプレ仲間の人間関係が邂逅することになる。ただ、それ以上に海夢が絡んだ旭さんがただのヲタク過ぎて最高に面白いのだ。

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スクウェア・エニックス 福田普一『その着せ替え人形は恋をする』88話 より

 

 会話の流れからして、旭さんも冬コミに来そうだ。

 五条が作った渾身の衣装を纏った海夢の姿を旭さんが見てどのようなコメントを残すのか。次巻の展開が見逃せない。

クリスマス到来

 冬コミの前に何があるか。そう、クリスマスだ。

 海夢はクリスマスに告白できるかもと五条の家に行く約束をとりつけ、勝負下着まで購入する力の入れ具合(圧倒的話術で買わされたとも言える)

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スクウェア・エニックス 福田普一『その着せ替え人形は恋をする』89話 より

 一方の五条はコスプレ作り当初から課題となっている「布地の問題」が解決されず、頭を抱えていた。五条の頭の中は作りたいものが思い浮かんでいるが形にできない焦燥感と無力感で埋め尽くされていく。

 そして訪れるクリスマス。

 その結果は「五条家にクリスマスの文化は無い」という悲しいものであった。海夢が期待したようなものは、そもそも五条の頭の中には無かった。そしてそれ以上に五条は衣装作りに頭がいっぱいである。

モノづくりの”天命”

 今回の衣装作りの題材となっている『天命』。それと掛け合わされて描かれているのは、「モノづくり」の道で生きる人間の生き様である。五条も雛人形を作るモノづくりの道を生きる人間。その本質は、頭に描いた理想と自分の手で生み出すモノの乖離に苦しむ道である。

 五条の頭の中にはハニエルの姿が浮かんでいる。一方で、五条の知識と技量だとそれを軽々と表現できるに至らない。

 そして、この本質は恐らく一生変わらない。

 たとえ五条が完璧な雛人形を作ろうと、五条自身はさらなる高みを目指して納得しないのである。

 その道を生きてきた五条のおじいちゃんからのお願い。それは海夢に「五条が作ったモノ」を褒めて欲しいというものだ。

 その言葉に海夢は自信をもって返すのである。

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スクウェア・エニックス 福田普一『その着せ替え人形は恋をする』94話 より

 改めて海夢の存在は五条にとってもかけがえのない存在である。五条が歩く道は辛く険しいものだろう。しかし、海夢という存在があれば、その道のりが少しだけ楽に感じるのかもしれない。

衣装の完成

 最終的に五条は雛人形の姿から、着物の生地を中心にイメージに合うものを探した。そしてネットで中古の着物を購入することで「布地の問題」を解決した。

 しかし、一つ嬉しい悲鳴が起こる。

 出品者が着物だけでなく、それに合う帯まで送品してくれたのだ。それを見た瞬間、五条の中でインスピレーションが沸くのだ。冬コミまで4日ほど。残りは布地でベースとなる部分を作成するだけのはずだった。

 ただ、理想に近づくなら近づけようとうするのがやはり職人の道を生きる者の天命なのだろう。五条は届いた帯で既に完成していたコルセットを作り直す決意をする。

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スクウェア・エニックス 福田普一『その着せ替え人形は恋をする』95話 より

 最終的に完成したのは恐らく冬コミ当日。

 メッセージの様子から察するに。海夢は心配になって五条にメッセージを送っている。しかし、五条の方は衣装のこと以外頭に入ってこなかったのだろう。一方的に完成のメッセージだけ送って五条は目を閉じる。

 このシーンは最初のコスプレ(雫たん)時のやり取りを思い出させる。

 恐らく海夢は五条に怒って、安心して、衣装に感動して、そして冬コミで人を魅了する。そんな展開は次回13巻まで持ち越しである。ただ、その海夢の行動こそが職人として生きる五条に必要なものなのだろう。

主のイチオシシーン

 クリスマスを楽しみにネイルに行って、美容院に行って、勝負下着をつける海夢。さらには晩御飯まで作る(野菜を切る)ほどに力を入れている。

 その様子が最高にかわいらしい。

 特にこのシーンのどドヤ顔が最高だ。

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スクウェア・エニックス 福田普一『その着せ替え人形は恋をする』94話 より