2023年3月25日に『その着せ替え人形は恋をする』最新11巻が発売されました。
11巻も当然神展開。最高の漫画間違いなし。
前10巻、9巻の感想記事も書いています。
以下よりご覧ください。
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11巻感想と考察
ジュジュとコスプレ
身長が低く、子どもっぽい体形、童顔であることを気にしてコスプレの”幅”を狭めてきたジュジュ。しかし、ミヤコらに騙されるような形でブラックロベリアのコスプレをすることになった。
本来であればコスプレは趣味。
「好き」を起点に広がるその趣味は自分とは違った姿になれることが1つの魅力だろう。しかし、作品への愛やコスプレへの本気度が増すにつれて、その自由は失われてしまった。
だから、今回のコスプレは1つジュジュの価値観を変えてしまうようなものだった。心寿が口から漏らした「似合っている」という率直な感想は、ジュジュの心を軽くしてしまうのだ。
『その着せ替え人形は恋をする』80話 より
身長が気になるなら、全身を写さなければ良い。身長が気になるなら、下から見上げる構図で写せば良い。身長が気になるなら、周りに比較になるものを写さなければ良い。
11巻ではそのような「写真の撮り方」が1つフォーカスされている。ジュジュの撮影を通して描かれるこれらの技術は読者としてもタメになるものだろう。
この体験は間違いなくジュジュの転換点だ。
上述したが、コスプレは「趣味」だ。
趣味はいつか辞めなければいけない。誰に言われた訳でもないが、そのような強迫観念に囚われてしまう。
でも、そんなことはないのだ。好きならいつ始めても良い。好きならいつまでも続けて良い。趣味とはそういうものだ。「好き」であることが大切なのだ。
『その着せ替え人形は恋をする』81話 より
これは、この漫画を読む若者やヲタク層にとって心に留めておくべき言葉なのだろう。私自身も胸に秘めておきたい。
『棺』合わせの顛末
突発的なアイデアから始まった『棺』合わせ。しかし、その合わせはレイヤーの技術、造形の技術、撮影の技術が重なり合って完成度の高いものになった。
『その着せ替え人形は恋をする』84話 より
海夢は所々でモデルらしい、役に入り込んだ表情を見せるものの、基本的には皆でワイワイと楽しく撮影が続く。最終的には、ホラーが苦手なジュジュが我慢できなくなって倒れてしまうことでオチがつく。
『その着せ替え人形は恋をする』84話 より
旭の挙動不審答え合わせ
以前(9巻、10巻の感想記事時点)から、旭の挙動不審なシーンについては触れてきている。最新11巻ではその伏線が回収される形となった。
まだ読んでない方は合わせて読んでほしい。
私の考察はどうやら合っていたらしい。
端的に言うと、「旭は海夢が推し」だから。
好きすぎて避けてしまうタイプのヲタクなのだ。
『その着せ替え人形は恋をする』85話 より
私もヲタクだから分かる。ヲタクのタイプを2つに分けた時、推しに想いを全力で伝えたいタイプと静かに心に秘めて置きたいタイプに分かれるのだ。厳密には人それぞれ度合いが異なったり、シーンによって異なったりするのだろうが。
そのヲタクのタイプの違いを明瞭にしたのが海夢と旭だ。
仮に前者を陽のヲタク、後者を陰のヲタクとしよう。海夢と旭の邂逅。それは、陰と陽のマリアージュ。推しと言われて嬉しい海夢と推しと近距離で暴走する旭の結末は、陰のヲタク旭のガチ泣きしてしまう。
最高にヲタクという感じだ。
(私もこの感情はよくわかる)
『その着せ替え人形は恋をする』85話 より
次回のコスプレは?
11巻で『棺』編は幕を閉じた。
次なる二人のコスプレは『天命』という作品の天使様(ハニエル)というキャラクターに決まった。その漫画のキャラに五条も感じる部分があったようで、今すぐにでも作品を読みたいという熱意が沸いてくる。
『その着せ替え人形は恋をする』86話 より
その内容は、キャラクターが次々と退場するような構成。近年で言うならば、『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『チェンソーマン』のようなイメージだろうか。
しかし、『天命』はそれらとは違って、原作者の強すぎる拘りが滲み出ている。そんな中に描かれている天使様(ハニエル)は作品内ではなく読者そのものを魅了するような雰囲気を纏う。
その雰囲気をどのように出すのか。
五条は頭を悩ませるのである。
『ビスク・ドール』
五条がたどり着いた答えは、「人形」。
人の形をしていながら、人ではない。そんな雰囲気を実現するために、五条は自身の経験から人形を参考にしようとする。
五条が携わるのはお雛様。日本の人形である。
しかし、『天命』は西洋中世の設定。そこで五条は海外の人形を検索する。そこで五条は一つの知識を得るのだ。日本人形に囚われない独自の視点から作られた人形。
『その着せ替え人形は恋をする』87話 より
その名は、ビスク・ドール。
遂にタイトル回収がきたぁあああ。
タイトルにある『その着せ替え人形』という言葉が海夢を指しているのは想像できる。今まで「着せ替え人形」に「ビスク・ドール」とフリガナが振られていることに疑問を持っていた。
しかし、その伏線が回収された。
日本と西洋だとか、中世と現代だとか。既定の枠組みにとらわれない発想の人形。五条と海夢であるならば、コスプレという知識や技術を掛け合わせた人形。つまり五条が自身が今まで持っていた世界観以上のものを切り拓き、海夢で表現する。
そのような意味が込められているのではないか。
そして、『天命』のコスプレはコミケで披露予定だ。
コミケには多くの参加者が来場するだろう。
今回は丁寧にも、原作者が強い拘りを持っており、アニメの出来にも満足していないと描かれている。そこから考えられる展開は、五条が考えた天使様の世界観を海夢が表現しきり、コミケで話題になる。そのまま原作者にも伝わり、褒められるorいざこざが起こる。
そんなこともあるかもしれないと思った。
海夢の想い
前10巻では、海夢は『棺』合わせを終えた後に告白することを決意していた。『棺』原作をプレイするために一夜を共に?過ごした結果、自己嫌悪が止まらなくなった海夢。
ある意味その精神状態も『棺』コスプレというコスプレ対象の作品とリンクして描かれているのかもしれない。
『その着せ替え人形は恋をする』77話 より
しかし、『棺』合わせ後、五条が『天命』に関心を持ったためにアフターの参加は無しになった。そのため、結局この決意は果たされていない。
『その着せ替え人形は恋をする』86話 より
ただ、この問題もずっと付きまとう問題である。
海夢がいつ自身の想いを告げるのか。
それはコスプレの内容にも関わってきそうな気がする。これからも注力して読んでいきたい。特に『天命』天使様も愛を題材にしていることから、そういう話題になってもおかしくはない。
こちらについては12巻以降の楽しみだ。
今回のイチオシシーン
五条若菜のあごクイ。
メイクのためとは言え、少女漫画のような展開に海夢もドキドキが止まらない。当然、読者はニヤニヤが止まらないのである。
『その着せ替え人形は恋をする』82話 より