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【感想と考察】『【推しの子】』58話「成長」【漫画】

 2021年10月7日発売の「ヤングジャンプNo.45」で『【推しの子】』の最新58話「成長」が掲載され、更新されています。

 前回のあらすじなどは以下のリンクから確認をお願いします。

isoisogingin.hatenablog.com

 

 因みにですが、以前『【推しの子】』の今後の展開について割と本気で考察した記事を書いていますので、今後の展開まで予想したい方は以下の記事をチェックしてください。また、この記事で書いてある考察などを前提にこの記事のように各週の感想記事も作成しています。

isoisogingin.hatenablog.com

 

 

58話「成長」感想と考察

メルトくんの成長

 刀のハンドリングで劇場を沸かせるメルト。その様は正しく漫画の世界の様であり、メルトを知らない者はその『原作通り』の演技に驚き、メルトを知るものはその演技力の向上に驚くわけである。

 アクア曰く、『驚いている人間の感情ってのは驚くほど脆い』。正しく創作においてギャップという手法が好まれる理由でもある。人間だれしも想像の範疇の事を見ても「せやな。」で終わるのだ。想像を超えた、自分が知らない世界を見るからこそ、人間はそこに楽しさや面白さや嬉しさといった感情を見出すのである。

 演技に関しては素人のメルト。そもそも役者とは自分とは異なる人間を『演じる』。しかし、生きていくうえで全く同じ人間など存在せず、演技とはどこまで行っても99%止まりなのだ。メルトから見れば天才であるところのあかねの考察力を以てしても、それで自身のキャラだけでなく、絡みの有る全てのキャラの言動やその背景を考え抜いても、そこに現れるのは99%のキャラであろう。

 だからこそ、少しでもその99%に近付けるためには、自身と演技に重なる部分を見つけなくてはいけない。演じるキャラと感情を共有しなくてはいけない。ただ『理解する』だけでは、演技とは言えない。メルトが劇上で魅せたそれはこの劇の稽古で散々思い知った「悔しい」という劣等感であり、キャラの理解に留まることのない本心からのその感情は多くの観客を魅了するのだ。


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『【推しの子】』58話 より

 

感情が乗ればこそ

 人間達成感を感じる時には、感情が乗っているのだ。部活動にしても、創作活動にしても、受験にしても、旅行にしても。人生におけるあらゆる『感動』を生じる場面ではそれまでに喜怒哀楽様々な感情があり、それを乗り越えることでそれらの感情が一度に湧き上がってくるのだ。

 自身の場面を終えたメルトくんはこれまでの稽古場での劣等感や辛さ、それらを劇場で表現した開放感、歓声に囲まれた高揚感、様々な感情を一身に受け、そして昔アクアに言われた言葉を思い出したのである。


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『【推しの子】』58話 より

 

 楽しいわこれ。

 正しく感情の乗った本心からの言葉と表情である。

 

成長はメルトだけか?

 さて、圧倒的な成長を見せたメルト。しかし、練習をしているのはメルトだけではない。アクアも重曹ちゃんも、あかねも皆しているのだ。ここ数話はメルトくんが主軸に話が動いたが、その度にアクアの『演技は感情乗ってナンボだよな』という言葉が思い出される。


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『【推しの子】』17話 より

 

 そして、この言葉は感情演技を昔の記憶と生前の自分の阻まれるアクアにとっては完全なブーメランであり、皮肉なのだ。重曹ちゃんが認めるほどの器用さを持ちながら、役者として演技を完璧に近づける『感情演技』が出来ない。私たち読者はそんなアクアの姿を見てきた。そんなアクアがこれから魅せる演技は劇場の観客と言うよりは本作を読む私たち読者にギャップを与えるのかもしれない。

 アクアの劇場での振る舞いを座して待つ。

 (ちなみにアクアの演技に正座待機して一か月が経過しようとしている)

 

今週の重曹ちゃん

 ほんの一瞬のアクかな。俺じゃなければ見逃してるね。

 「あんたの入れ知恵?」という重曹ちゃんの発言はそれほどにアクアの演技に対する引き出しの数やその努力を知っていて認めているということを表しているんですね。


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『【推しの子】』58話 より