眩しすぎる……。
1巻が発売されてから数ヶ月。逆張りヲタクである私はなんとなく読むのを避けていたのですが、友だちの薦めに薦めるので読んでみることに。数分後にはハマっていました。
そして気がつけば、2021年10月4日に『アオのハコ』の2巻が発売されるではないですか。このままではタイミングを失う!という思いで今更かもしれませんが感想記事書いていこうと思います!
『アオのハコ』1巻感想
『アオのハコ』の意味は?
アオと言えば『青』、つまりは青春を表しているのでしょう。ハコは建物を表すためによく使われる言葉です。本作を読んで思い浮かぶのは『学校』や『家』でしょうか。 つまり、『アオのハコ』というタイトルは千夏先輩と大喜の青春が繰り広げられる場所を示している訳です。二人の出会い、部活動は違えどネット越しに「アスリート」として尊敬する『学校』での関係、ひょんなことから同居することになった『家』での関係。これらを描いているのが『アオのハコ』な訳です。
ジャンプ漫画としては異色?
さて、部活動×恋愛という割とメジャーなテーマを扱った本作。更にはひょんなことから主人公とヒロインが同居することになって??とこちらもメジャーな展開。恐らくこの展開だけ聞くと「またこのパターンか」「それ面白いん?」となるでしょう。
安心してください。面白いです。
なんで面白いんか考えてみたんですがここでは3つほど思い浮かびました。
- ヒロインレースがない
- アスリート特有の厳しさ
- ラブコメではなく恋愛漫画
以下で解説していきたいと思います。
ヒロインレースがない
少年漫画のラブコメと言えば、直近で考えると『ニセコイ』や『五等分の花嫁』が思い浮かぶでしょう。『ニセコイ』と言えば、個人的にはヒロインが増えすぎた挙句、主人公である楽の感情が理解できないまま完結したな~という印象を持っています。『五等分の花嫁』はその流れを汲んで、ヒロインは初めから5人に限定されており、尚且つ過去のエピソードや伏線などをしっかりと踏まえた上で完結したな~という印象です。
まぁ私としては伏線などから『五等分の花嫁』もヒロインは四葉しかあり得ないと散々感想記事で書いていたのですが、世間はそうではなく、また作品としても四葉と姉妹を誰が花嫁か分からないように意図して漫画を作っていたと思います。
つまるところ、少年漫画にはヒロインレースが常だったのです。
数あるヒロインの中から自分の好みの子を選んで、その子が最終的に結ばれるかどうかの行方を見守りながら読み進める。これが少年漫画における『ラブコメ』の鉄則だったのです。
しかし、『アオのハコ』は違う!(恐らく)
1話の扉絵からして描かれているのはそれぞれバドミントンとバスケットボールの装いをした千夏先輩と大喜なのです。
『アオのハコ』1話 より
この扉絵から始まって、1話の半分くらいは大喜が千夏先輩とどのように出会っただとか、どれくらい意識しているだとか読者として目に映るのは大喜がとにかく千夏先輩を意識していることです。
1話から大喜の幼馴染として雛が登場します。ビジュアルも可愛く、ノリも良い超いい奴なのですが、1話や1巻を読んで雛が大喜と最終的に結ばれると思う人は少ないのではないでしょうか。(結ばれてほしいと思う人は沢山居ると思います。)
『アオのハコ』1話 より
どれだけ可愛くても、が実は大喜のことが好きだとしても、読者の目には「結ばれてほしい」負けヒロインに映るのです。それは1話から「『アオのハコ』のヒロインは千夏先輩だ!」という漫画に盛り込まれたメッセージの影響でしょう。
アスリート特有の厳しさ
次に挙げる特徴としてアスリート気質があります。勿論今までスポーツ漫画は沢山描かれているのですが、主人公だけがアスリート気質の漫画や試合やスポーツの合間のみその気質が見えるものも多い印象が個人的にはあります。
しかし、この漫画は常に頭の片隅に『アスリート』としての自覚があるのです。スポーツを心から楽しみ、またその楽しさの理由を言葉として具体化できていることがもう高校生として、いちスポーツマンとして素晴らしいことだと思います。しかし、それに加えて、筋トレやストレッチをしている場面が多々挿入されていたり、ラブコメの定番放課後の登下校の買い食いでも「一日の摂取カロリー」の話題が出てくるのです。
『アオのハコ』1話 より
『アオのハコ』4話 より
高校生として、恋愛をしながらもその一方では誰よりもスポーツに真摯で、強豪校に通うアスリートとしての自覚を持って生活をする。彼らの姿は私の目にはどこまでも純粋に見えますし、だからこそ彼らが織り成すであろう恋愛も純粋なものになるのではないかと信じることができます。
ラブコメではなく恋愛漫画
ここまで説明してきた通り、『アオのハコ』は少年漫画、ましてやジャンプ作品として異質だと言えます。純粋なキャラクターたちが恋愛とスポーツをどのように両立し、それらはどのように影響し合うのか。丁寧な心理描写は漫画と言うより小説に感じますし、笑いはあってもラブコメではない。正しく恋愛漫画なんです。
そう。純粋な恋愛漫画なんです!
純粋だからこそ、大喜の様に恋心をスポーツへと昇華する人も居る一方で、雛の様に恋心を自覚できていなかったり、千夏先輩の様にまだ恋と呼ぶにも到達していなかったりと各々が様々な感情を抱えています。これらの感情と関係がどのように変化していくのか、今後の展開が楽しみです。
『アオのハコ』3話 より
千夏先輩と大喜の関係性
千夏先輩が引退した直後にその悔しさをバネにシュート練習をしている場面を見かけたことで大喜が千夏先輩を好きになった一方で、その話を知ることで海外に行かずバスケットボールと向き合いたいと「あの日」の感情を思い出した千夏先輩。千夏先輩の感謝の言葉には邪なものはないと思います。ある一つの出来事が恋愛の方向性とスポーツの方向性と違うベクトルにあって、大喜は意識したが千夏先輩は意識していない。
『アオのハコ』1話 より
だからこそ、いつか千夏先輩が大喜に恋愛感情をハッキリと抱くとしたら、その時は逆に大喜はスポーツに対して一生懸命で千夏先輩への恋心は全く別の所にあるのかもしれないと思います。そういうメタも含めて大喜のIHに行くという目標と、そのために必死に努力する姿には応援のし甲斐がありますよね。
雛と匡
この二人は大喜と幼馴染です。1巻で雛は大喜のことが好きだと自覚し始めた描写が為されています。恋愛は人間関係を良くも悪くも変えてしまいます。
一方で、匡は大喜のことも雛のこともよく"見ている"印象を受けます。恐らく雛が大喜のことを好きなことには本人の自覚よりも先に気づいていますし、大喜が一直線な性格のことも知っています。
だからこそ、大喜に対する「結局自分に素直なやつが強いよな」という感情は大喜への憧れや嫉妬、自身への皮肉が込められていると思います。匡が雛のことを実は好きで、でも雛の恋心や大喜の様にバドミントンが上手くないことなど自信を客観的に見て諦めているのかな、なんて考察してみたりします。なんにせよ大喜の隣に1巻から登場していますし、今後この恋愛模様に絡んでくるのかなって思ってます。
『アオのハコ』2話 より