皆さんこんにちは。
今週は本誌の方では『【推しの子】』は休載です。
本誌では先週、ジャンプラでは正に今日更新された『【推しの子】』78話には皆さんこんな感想を抱いたのではないでしょうか。
「そうはならんやろ」と。
そこで、私も先週の本誌更新で読んでから1週間経った今改めて、78話と向き合ってみようと思います。先週更新の78話の感想記事はこちらから読めます。
私は重曹推しです
今まで私の感想記事を読んだことがある人なら知っているだろうが、改めて宣言しておく。私は重曹推しだ。
当然、今まで書いた記事もこれから書く記事も重曹贔屓のものになる。
私としては最低限の客観性を持って書いているつもりだが、そのところは心の隅に留めておいてほしい。3秒で矛盾するが、重曹贔屓の記事には違いない。
さて、一言で言うならば78話でアクアがあかねにキスをした。
『【推しの子】』78話 より
しかし、私は分からないのである。
こうやって趣味で感想ブログを書くぐらいには日々文章に触れ、最低限の国語力を備えていると自負をしているのだが、その展開自体も、そこに至る経緯も全く見えてこないのである。
先週の私は78話を読んで呆然とするしかなかったのだ。
目の前に広がる私の知らない論理に。
そこで一週明け、ジャンプラで更新される今日、改めて78話を読み、その展開と、私がどこに引っかかっているのかを整理したいと思う。
(正味展開の全てに引っかかっている)
78話までの展開振り返り
ヒロインレースという構図
私は以前から『【推しの子】』のヒロインは重曹ちゃんしか在り得ないと主張している。
その理由としては、アクアとあかねはビジネスカップルであり、お互いに恋愛感情が分からないことも明示されており、一方でアクアが重曹ちゃんを陰ながら手助けするようなシーンや、挙げればキリがないがアクアが自分を偽らないシーンが見受けられる為だ。
しかし、作品の構造としては(正直無理矢理感を以前から感じているが)ダブルヒロインの構図を取っている。そして78話での「正直、ついていけない…」と感じてしまう要因もそのヒロインレースという構図が関係しているので、私の場合はこの記事に限りあかねと重曹を並列で語るとする。
重曹ちゃんとアクア
重曹ちゃんの登場は1巻6話で初めて登場する。
時系列として追うなら、アイのドラマ撮影の現場で10秒で泣ける天才子役という文言と共に登場した。ここで敢えて「時系列として」と枕詞を置いているのは、漫画としての初登場は未来軸のインタビューシーンになってしまうからだ。こちらについては後ほど触れる。
『【推しの子】』6話 より
この撮影でアクアと共演することで重曹ちゃんは自分を見つめなおすこととなる。
次に登場したのは高校生になってからだ。
アクアとルビーの1学年上の先輩として登場した彼女は『今日あま』のドラマ撮影のエキストラをアクアに依頼する。本気の演技を抑えて都合のいいキャラとして自分を押し込めていた重曹に対して、アクアはいとも簡単に重曹ちゃんが本気で演技できるような状況を整えてしまう。
その撮影で重曹ちゃんは初めて恋を知るのだ。
『【推しの子】』17話 より
「今日あま」の撮影後、アクアに半ば無理矢理な形で新生B小町に加入。
後々ルビーのアイドルとしての素質に気づいていくが、最初にB小町に加入した理由としては「アクアに誘われたから」が大きいだろう。つまるところ、好きな人からの頼みを断れなかったのだ。
その後の大きなイベントとしては恋愛リアリティーショー「今ガチ」だ。あかねの変化後、アクアは重曹を公園に誘って、一緒にキャッチボールをしている。重要なのはその時点では「黒川あかねに対する気持ちは恋心ではない」と結論付けている。
『【推しの子】』30話 より
重曹ちゃんの”初めて”のキャッチボールをした後の主要なシーンはB小町のファーストライブになるだろう。ここでは、アクアはぴえヨンの変装をして、陰ながら重曹ちゃんの相談に乗るなど支える役割をしていた。
そんなアクアの姿に対して、あかねとのキスなど放っておいて「推しの子になってやる」と宣言する訳だ。勿論、恋に落ちるシーンが明確に描かれていたが、このシーンも「アクアのことが好き」とハッキリ言っているようなものだ。
『【推しの子】』38話 より
その後は2.5次元舞台編(長い)に入る。「東ブレ」編では重曹ちゃんとアクアのガッツリと絡むシーンは少ない。というのも舞台上ではアクアはあかねと同じ陣営であり、重曹ちゃんは姫川と同じ陣営であったためだ。
「東ブレ」の慰安旅行として宮崎に行くことになり、キャリーケースを買いに行くという名のショッピングデート回が73話だ。
(話数の飛び方的に如何に2.5舞台編が長いか良くわかる)
アクアは重曹を完璧にエスコートする。
「待った?」「待ってない」のやり取りに始まり、重曹ちゃんのイメージカラーの白のキャリーケースを選び(これは流石に重曹の自意識過剰)、帰宅著中の予約必須の店を予約しておいてディナーを食べる始末。
『【推しの子】』73話 より
ここまでが重曹ちゃんとアクアの大まかな関係性の変遷だ。
そして6話の1ページ目にある未来軸の話。
私の記事では将来、復讐として?アクアが中心となって制作する映画のインタビューであると仮定しているが、そのインタビューで重曹ちゃんが居ることから、アクアと重曹ちゃんの関係はこれからも続くものであることが分かる。
しかし、それ以上に強烈なのが、「あーくん」呼びしていることだ。
現在は「あーくん」とは呼んでいないので何かしらの距離が更に縮まるようなことが約束されていることだけは間違いない。
『【推しの子】』6話 より
あかねとアクア
それではあかねとアクアの関係についても見ていこう。
あかねの登場は「今ガチ」である。要領の悪いマジメキャラとして登場したものの、そのマジメさ故にネットでの誹謗中傷を受け耐えきれなくなってしまう。
自殺未遂にまでいったあかねを助けたのがアクアである。
『【推しの子】』25話 より
アクアに助けられたあかねは「今ガチ」でも素の自分を曝け出すのではなく、「演じる」ことを決意する。その参考としてアクアの理想の女性を尋ね、妄想じみた天才的な想像力でアイを模倣してみせる。
前項で既に述べたが、ここでアクアは一度、「アイの真似をするあかねに対するこの気持ちは恋愛感情では無い」という結論に至っている。
しかし、その能力を使えると思ったアクアは、今後利用することを考えてあかねにキスをするのだ。
『【推しの子】』30話 より
そもそも、このキスが全ての展開をややこしくしていることは間違いない。
あかねの次の登場は「東ブレ」になる。
「東ブレ」が始まる前にビジネスデートなるものを二人はしている。
場所はあかねが決めたと思われるインスタ映えするカフェで、二人で写真を撮ってSNSに投稿することが目的であった。会話からも完全にアリバイ作りであることが分かる(特にアクア側は完全にアリバイ作りのためだ)。
そしてそこからは、およそ漫画3冊分の長丁場である。アクアとあかねは舞台上でメインキャラとそのヒロインを共に演じる。しかし、ここで押さえておきたいのは舞台上でのことではなく、舞台外のことだ。
感情的な演技が求められた結果、過去のトラウマから倒れてしまったアクア。そのアクアを看病したのがあかねだ。
(重曹ちゃんも気にかけていたが、あかねのような仮ではあっても彼氏彼女という肩書が無かったために譲る形となった)
『【推しの子】』51話 より
その際に、寝言としていったアクアの「アイ」という台詞から、あかねは凄まじい妄想を展開した(と思われる)。ここで「と思われる」がついているのは明確に描かれている訳ではないからだ。
『【推しの子】』51話 より
しかし、起き上がったアクアに抱き着き「辛いことは一緒に抱える」と語りかける。
そしてその行動の原因を「私が考えた設定の話」としていることから、「今ガチ」で手にしたアクアの情報とそこからの妄想、そしてこの場で手に入れた「アイ」という言葉から「アイの真実」の近いところまで気づいている可能性がある。
(正しく「便利な設定」と言いたくなる笑)
そして、「東ブレ」を終えた二人はビジネスデートをする。
その中で、アクアは宮崎旅行に誘うが、あかねはそれを「別れ話の為」とすぐに察する。宮崎に行く前にハッキリさせようとなる二人であるが、そこで明らかになったのは、アクアもあかねも「好き」という感情以前のものであったということだ。
お互いに「好き」かどうかわからない。
そのような状態を言葉にし、アクアの復讐話の真相(偽)を聞いて何かしらの真実に辿り着いてしまったあかねはその場を去る。結局別れ話は有耶無耶になった形だ。
『【推しの子】』72話 より
そして宮崎に着いた二人は、アクアの遺体探しと名の観光を共にし、その夜、ルビーとあかねが亡きゴローの白骨遺体を発見する。
そして最新78話だ。
あかねは全部背負うアクアを見て寄り添いたいと思った。しかし、アクアにとっては居ない方が良いようだ、と主張する。それに対して、アクアは「本当はずっと見つけてほしかった」「あかねを守りたい」とキスをするのだ。
『【推しの子】』78話 より
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私の心中はクエスチョンマークで埋め尽くされたが、一旦ここまでは整理できただろうか。重曹ちゃんとあかね二人のアクアとの関係性を整理したところで次に行こう。
では、78話を考える
3分で作った雑コラレベルの数直線を見てほしい。
まず一目で重曹の方が圧倒的に先に好きであることが分かる。別に先に好きだから付き合うなんて理論は当然間違っているが、あかねはまだ「好き」を自覚していないのだ。
「BSS」をやるなら少女漫画かガチの恋愛漫画でやってくれ。
『かぐや様』のマキちゃんは誰も「先に好きだった」の「先」を知らないのだ。連載として描かれていないから、その重みも分からないし、ギャグとして消化できる。
重曹は、無理だ。
でも、ここで言いたいのは重曹の方が先に好きだったとかではなく、それとはまったく別に78話直前に「別れ話」があるということだ。72話時点で「恋愛感情はない」と明言されているのだ。
無いと言うよりは「分からない」の方が正しいが、この場で論じるときに意味は変わらない。つまり、無いにせよ分からないにせよ、恋愛感情が無かったのなら、そこから「好き」を自覚するなり芽生えるなり、「何か」があるはずなのだ。
しかし、72話以降、アクアとあかねがすることと言えば、観光という名目のかつての記憶を頼りにした遺体探しだ。いったいそのイベントのどこでアクアはあかねを好きになったのだ??
私個人の考えとしてはあかねがアクアを好きな理由は分かるのだ。自殺未遂を助けられたというのは恋愛感情を抱くイベントとしては大きなものだ。
(それも「好きが分からない」で否定されているため困っちゃうが)
では、アクアお前はいつあかねを好きになる瞬間があったんだ?
それを踏まえて改めて78話の展開に行く。
まず、妹が白骨死体を発見し、身内がてんやわんやなっている裏の深夜の公園で別れ話もとい告白まがいのキスをするというのがもう分からなくて面白い。
いや、そうはならんやろ。
TPOは弁えてくれ。
ルビーが事情聴取されていてあかねがされていないのも分からんし。
それに続いてアクアの「利用していてた」宣言と謝罪。
これも、あかねに対する最初のキス(今ガチでの)の時既に、利用の為であることが明確に描かれている。私たち重曹ファンとしては、「あかねにキスとか許さんが、利用するためならまぁ…」と心を落ち着けていたのだ。
この利用宣言も、正直何を今更、という感じが拭えない。
最初から利用しか頭になかったのに、今更それに思う節があることにむしろ軽くヒくレベルだ。
そして、あかねの「殺した人が悪い」という主張。
『【推しの子】』78話 より
一体いつから、「誰が悪い」という話になっていたのか。
そりゃぁ、殺した人が悪いに決まっている。
ここで、アクアがアイと関わりがあることをあかねが持ち前の想像力によって把握していると仮定する。それでもおかしいのだ。
なぜなら、今回の死体はゴローである。
アクアにとっては元自分の身体で、事件に大きく関わっていると言える。
しかし、あかねにとってはただ何年も前に殺された死体でしかないのだ。つまり、アクアが転生しているという事実を知っていなければ、今回の事件とアクアが追っている復讐相手が結びつくはずもない。
そしてアクアが過去に口にした「アイ」という言葉からアクアがアイの身内であることは想像力で補えても、転生云々はやはり補えないのである。
だから、急に誰が悪いとか責任だとか話し始めて「???」となってしまった。
あかねの「私が居ない方がいい」宣言は背負うアクアに対して寄り添うはずが、自分が居ることで復讐のための利用だなんだを更に背負わせた??とかで一応解釈しておく。最初呼んだときは、このセリフも意味が通らなかった。
そして別れようとするあかねに対してアクアがキス。
このキスも、以前のは客観的なメディアの前だからこその利用のキスという言い訳が出来た。深夜の公園で誰も見ていない中するキスは、「利用」が言い訳にはならないことは分かるだろう。
最後に、本誌には「”利用”する為では、なく――。」という煽り文。
マジでガチの感想を述べるなら、個人的に意味を100%理解して読めたのはルビーが事情聴取を受けるシーンまでで、それ以降は以上の様にツッコミ盛りだくさんであった。
あかねの死亡フラグ?
以上の分からないシーンに関して、一つ捉えられるのはあかねの死亡フラグである。
正直、私はこれが重曹がヒロインかあかねがヒロインかを決定づけるような展開には見えない。
未来軸の重曹ちゃんの台詞から「死んだら天才も」という部分がある。
最初はアイのことを指していて、いずれ重曹ちゃんに自身がアイの子であることを明らかにするシーンがあるのかと予想していた。
しかし、重曹ちゃんとあかねは互いに相手を天才と認識し、ライバル意識を持っている。もしあかねに身の危険が起こるような展開があれば、その「天才」が指す言葉の意味も変わるだろう。
次に、アクアの言葉に注目して頂きたい。
「好きだ」ではなく、「守りたい」。
一体、何から守るんだ??とは思わなかっただろうか?
あかねの「寄り添いたい」は分かる。バトル漫画でもないのに告白で「守りたい」が出るのはアクアが中二病なのか、原作が先の展開に引きずられているかの二択だ。
先の展開に引きずられていると述べたが、総じて78話はキャラクターの感情が入ってこない。正直展開に無理矢理動かしている感じがして、むしろ動かされるあかねやアクアを憐れむレベルなのだ。
これも伏線?
最後に、キスシーンが描かれた。
しかし、アクアが後ろを向いていることから、本当にキスをしたのかわは分からない。今後の展開次第とも言えるが、78話の展開はあかねやアクアの今までのキャラクター性さえも揺るがすものであったと記しておく。