実は第1話から個人的にひそひそと読んでいた『尾守つみきと奇日常。』。どうやら連載も1周年を向かえたようだ。
そして、このタイミングにて本ブログでも感想と考察を定期的に書いていこうと思う。どうぞよしなに。
2024年10月16日にサンデーうぇぶりで『尾守つみきと奇日常。』最新42話「つみきさんと野外活動。」が更新されたので感想と考察を書いていこうと思います。
42話「つみきさんと野外活動。」感想と考察
野外活動編スタート
さて、36話頃より続いていた夢中先輩を含むストーリーに一区切りがつき、友孝くんとつみきさんは野外活動というイベントに突入する。生徒会の野外活動としてのボランティア合宿。参加メンバーは友孝くん、つみきさんに加えて、夢中先輩、杉見さん、千賀くんである。
Ⓒ小学館 2024
森下みゆ『尾守つみきと奇日常。』42話
千賀くんは夢中先輩が友孝くんを狙っていることを気づいての監視目的。杉見さんは安定の観察目的。夢中先輩は友孝くんとの関係性を近づけることを狙っている。当然であるが、本来の目的としては、ボランティアとして森林清掃に取り組むことだ。
つみきさんの鈍感
42話で注目すべきポイント。それはつみきさんが素手で熱々のナベの取手を掴むシーンだ。人間と幻人が関わり合う多様性の時代。幻人の人間離れした能力は度々描かれてきた。そしてそれ故の苦悩があることも描かれてきている。
今までの描かれてきた幻人としての行動の中でも今回のものは突飛である。治癒能力があることは既出である。しかし、幻人とは言え傷つくのが痛くないはずがないのだ。
つまり、これはつみきさんの鈍感。
Ⓒ小学館 2024
森下みゆ『尾守つみきと奇日常。』42話
つみきさんはウェアウルフの中でも特に人間に近い見た目をしている。そのため、家族からウェアウルフが人間社会に出る勇気を与える存在として言葉をかけられてきた。当の本人は2話でそれを否定している。「妹にマウントを取るため」。それがつみきさんが外の世界に出る目的であると語られている。
しかし、当の本人がウェアウルフの架け橋になっているかどうかは関係ない。様々な感性を育てる小さいうちから、能力や特性の異なる人間と関わる中で全く歪みが発生しないとも思いきれない。
実際34話で、つみきの父はつみきのことを「平気だから心配」と評している。小さいころから何でも無さそうな様子は健在であったらしい。実際に小学校の時に幻人の友達と喧嘩した時も何事もなかった様子だった。
Ⓒ小学館 2024
森下みゆ『尾守つみきと奇日常。』34話
だから、これはつみきさんの長所でもあり、短所でもあるのだろう。マイペース故の鈍感さを長所だとすれば、自分の痛みや傷を顧みないその姿が短所でもある。
そして、その姿が読者同様に友孝くんにも引っ掛かるのだ。
つみきさんと友孝の落下
つみきさんと友孝は今まで何回か特大ジャンプを経験している。学校の窓からの飛び降りが最たる例だ。それはつみきさんの幻人ゆえの身体能力があってこそだ。しかし、いくら幻人と言えど、予想できない落下は対応のしようが無い。
急激な雨によって緩んだ地盤。友孝くんとつみきさんがちょうど立っていたその場所は雨によって崩れて、二人は崖から落下してしまう。流石のつみきさんも友孝くんを庇うことに精一杯。つみきさんのお陰で友孝くんに大きな怪我はない。しかし、つみきさんは足に怪我を負ってしまう。
Ⓒ小学館 2024
森下みゆ『尾守つみきと奇日常。』42話
ただ、それでもつみきさんは笑うのだ。
自分の怪我など何ともない。
治癒が終わり次第、友孝を担いで崖を登る。
ここでも友孝くんは前項のつみきさんへの表情と同様のものを見せる。つまり、友孝くんはつみきさんをあくまで”一人の存在”として扱っている。人間だとか幻人だとか関係ない。優れているとか能力があるとか関係ない。
ただ、一人の存在。そう考えると火傷が痛くないはずがない。落下で足を怪我することが痛くないはずがない。治癒能力があっても本来であれば笑顔なんて出来ない。だから、それはつみきさんの鈍感。
そして、こういう時に鈍感ではないのが友孝である。恐らく、つみきさんを”一人の存在”として寄り添うのではなかろうか。と言うよりそうであってくれ。
主のイチオシシーン
薪を限界まで抱えるつみきさん。
ウェアウルフの習性か、割っているうちに楽しくなったと思われる薪。タオルを首から提げて薪を抱えるその姿はまるで銭湯終わりのオジサン。ただ、その自信満々の表情が圧倒的につみきさんらしさ溢れている。
MAKIのオノマトペもいい味を出している。
Ⓒ小学館 2024
森下みゆ『尾守つみきと奇日常。』42話






