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【感想】『あつもりくんのお嫁さん(←未定)』最終巻

2021年1月1日元旦になんと以前ブログ記事でも紹介した『あつもりくんのお嫁さん(←未定)』の最終巻がなんと発売されました。個人的には「これからどんどん記事にしていくぞ」という感じでしたので少し残念と言うか寂しい感じもしますが、折角なので最終巻の感想記事を書いていきたいと思います。

isoisogingin.hatenablog.com

 

 

『あつもりくんのお嫁さん(←未定)』最終巻ネタバレ

逃避行の果て

二人だけで旅行に出かけた錦と敦盛。目を覚ます前に敦盛が見た夢は「父親とただ美味しいものを食べに行っただけ」という過去の記憶でした。旅行を通じてさらにお互いの「好き」を通じ合わせた二人は遂に結婚の約束をします。そしてもう一度、お互いが好きであるからこそ、敦盛の家族と正面から向き合うことを決意します。

 

「家族」

 錦が招待された敦盛の実家は下に病院が付いており、巨大な駐車場も兼ね備え、さらにはエレベーターまである豪邸でした。家に来た錦を敦盛は招待しますが、その中で敦盛の父親の趣味の部屋に入ります。中には大量の絵馬が飾られていました。錦が手に取ると、その絵馬の裏には「お父さんみたいな立派なお医者さんになりたい」という敦盛の昔の願いが書いてありました。それを見て錦は驚き、敦盛は恥ずかしがるのでした。

 

敦盛は錦のことを父親と母親に紹介しますが、父親は相変わらず興味がない風です。しかし、錦は敦盛の父親に「今日は別のことで伺いました」と前置きをしてから、祖父を助けてくれたことへの感謝を述べると共に、祖父のお店へ招待することを伝えました。敦盛の父は断りますが、敦盛が「一緒に行きたい」と伝えると困った顔をしながらもその願いを承諾しました。

 

錦の祖父が経営するお店は敦盛の父にとっても心安らげる場所であったようです。そこで錦は親が決めたことでがんじがらめになっていた中で敦盛に救われたこと、敦盛はその冗談を本気で実行して「抗う」ことを錦が証明してくれたことをそれぞれ打ち明けます。そして敦盛は諦めず、実家に戻ることを打ち明けます。

息子として見てほしかったために反抗して家を出たと言う敦盛に対して敦盛の父は大事に思っているからこそ跡を継がせようしたと言います。跡を継ぐのは弟でも良いと言ったこともどうやら、敦盛が跡を継ぐのを嫌がっている風であったからだと打ち明けます。そこから敦盛と父の言い合いが始まり、しかしそれは着実に本音に近づいていくのでした。

 

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『あつもりくんのお嫁さん(←未定)』6巻23話

結局、歪に見えた家族の形も「父」と「息子」それぞれが何かしら思うところがありながら口にしなかった故の歪であり、それはまだまだ解消可能なものであったようです。敦盛の父はお店を出る際に錦に対して将来、気持ちが変わっていなかったらまた一緒に来ても良い、と錦のことを認める発言をします。

 

受験そして未来へ

初デートは錦の提案で天満宮へ行くことになります。錦は「敦盛が大学を合格すること」、敦盛は「錦も一緒の大学に合格すること」とお互いが同じ道を見て想いあった願い事をします。デートの最後には、錦から腕時計をプレゼントし、敦盛はずっとつけていると約束するのでした。

 

時は飛んで、錦の大学発表へ。錦の隣りには、敦盛ではなく敦盛の弟の雪鹿くんが居ます。どうやら、敦盛の代わりに居てくれるようです。2年間めちゃくちゃ頑張った甲斐があって無事に錦も合格したようです。

敦盛に合格を伝えに行った錦を待っていたのは大人っぽくなった敦盛でした。花束を用意し、車を運転して錦を迎えに来る敦盛はそのまま大学を錦に見せ、家まで一緒に行きます。しかし、その家の中には何もないガランとした部屋がありました。敦盛は錦に「一緒に住もう」と言い、錦も喜ぶのでした。

家に挨拶に行った際は合格してみせたということで、錦の父も錦に対して「合格おめでとう。本当によく頑張った」と声をかけるのでした。

 

そして、結婚式へ。

どうやら敦盛と錦の出会いはお互いを変えただけではなく、お互いの家族の形にまで影響したそうで、敦盛と雪鹿くんは一緒に笑い合い、父親同士は錦の祖父と共に仲良くなり、敦盛の母も錦のことを認めたようです。今までの出会いに感謝しながらも、二人はお互いが出会えたことに一生感謝する、とまた新たな一歩を踏み出すのでした。

 


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『あつもりくんのお嫁さん(←未定)』6巻最終話

 

『あつもりくんのお嫁さん(←未定)』最終巻感想

 最終巻なんか~い

まぁ冒頭でも言いましたが、私の一言目は「最終巻なんか~い」というものです。私自身この作品を知ったのが最近であり、「これは今後に期待」としたり顔で漫画を購入したのが昨年末でした。そしてその購入から数週間後には最終巻が発売されるなんて誰が思いましょうか。 

個人的には、やはりまだまだ二人の物語を見たかったというのが本音なところですね。やはり展開も詰め込んだ感じがあって、最終巻はとてつもない疾走感でした。「家族」という枠組みに焦点を当てているからこそ、そこについてもっと考えたり、アプローチしたりしても、と思うところもあります。しかし、それを踏まえても敦盛と錦が互いに影響し合い、お互いの「家族」というしがらみから新しい一歩を踏み出すという物語は綺麗にまとまっていると思います。二人が結ばれたのは良かったし、最後蓮人くんと八千代ちゃんの絡みが収録されていたのも個人的には評価が高いです。私自身、この二人のような、メインではないカップル要素が好きなんですよね。結ばれてほしいです。(厄介カプ厨)

 

「家族」というテーマ

この物語では「恋愛」よりもむしろ「家族」に焦点が当てられていると思います。

錦は①父に許嫁を決められるというしがらみがあり、②自分にはない価値観を持っている敦盛と出会い追いかけることで敦盛を好きになります。一方で敦盛は①医者という後継者としてしか父に見られていないということに対して、②自分を追いかけてきた錦の姿を見て、何でも実行できると思い、その中で錦を好きになります。

この中で①はお互いの家族の在り方であり、②はそれに向き合うために錦や敦盛が互いに与えた影響です。言ってしまえば、家族の問題に関してはどちらも錦や敦盛を思ってのことというものでしたが、それに対して錦の父は言っても聞いてくれない、敦盛の父はそもそも会話をお互いにしないという問題を歪にする原因がありました。それを錦は行動で示すことで、敦盛はただ逃げるのではなく正面から向き合って対話をすることで解決しました。敦盛が冗談のつもりで言った結婚の約束でしたが、そこから歯車が噛み合うように物語が動き出したのです。

 

しかし、やはり上述したように、もっとたくさんお話を読みたかったといったところが本音ですね。家族の問題についても構造としてはとても上手いのですが急いだ感じが否めません。「家族」というデリケートな話題であるからこそ、もっとゆっくり解決していくものだと思いますし(作中では時間が流れているので、単行本一冊にまとまってるが故の急いだ感じという気もしますが) なんならこの二人が作る「家族」という枠組みもまた一つ新たな物語であるでしょう。いわゆる学園ラブコメのような新しいライバルが出てきて場をかき回すようなことをしなくても、まだまだこの作品には期待していたことがあっただけに少し寂しい感じもします。

まぁ、それでもタアモ先生お疲れ様です。また次の作品に期待しています、と言った感じで締めくくりましょう。面白い作品をありがとうございます。