雨隠ギド先生が描く新作『おとなりに銀河』2巻の感想を書いていこうと思います。
前回記事はこちらから。
『おとなりに銀河』2巻感想と考察
隣の芝は青く見える
隣の芝は青く見える。つまり、他人のことが良く見える。
一般的に、他人に対しては良い所ばかりを見て、自分に対しては悪い所ばかりが見える。そのような人を自己肯定感が低いなどと形容する。
しおりは一郎とは別のアシスタントとして働くことになった。
しかし、一日で解雇(漫画業界でこの表現が適切かは分からない)されてしまう。
しおりは、その原因を技術的なものよりもコミュニケーション的なものであると判断する。とある島の姫として生きてきたことに対して環境が特殊であるという自覚はある。
ここで、環境のみのせいにしないことが五色しおりの「らしさ」である。
『おとなりに銀河』7話 より
生きてきた環境が特殊であり、自分自身にも偏りがある。
しかし、その環境の中で変わろうしなかった自分にも責任がある。
だから、進んで学ぶ。
声を大にして言いたい。偉すぎる。
一郎も私と同じ気持ちなのだろう。
そんなに卑下せずとも、しおりには良いところが沢山ある。落ち込んでいる時は、悪い所ばかりに目が行くようになってしまうから。だから一郎は伝えたいのだ。
長い人生のわずか数日で会っても一緒に過ごしたから。彼氏であるから。だから一郎は伝えたいのだ。
しかし、一郎は口下手である。だから漫画で描くのだ。
徹夜して描いた漫画は、一郎からしおりに向けた、この世でたった1つの意味を持つ作品となる。そこに込められた真っすぐな感情を、しおりも正面から受け止める。
しおりにも素敵なところがある。その想いにしおりは涙を流すのだ。
『おとなりに銀河』7話 より
クリスマスデート
某漫画家系ジャンプ漫画でもお馴染み、締め切りに追われる漫画家にクリスマスはないパターン。一郎もしおりも漫画を描くうちにクリスマスを迎える。
夜に一郎としおりはイルミネーションデートをする。
そこでしおりは自身の想いを吐露する。
棘に刺さって契約を結んだ。その不平等な契約で、好きな人が苦しめられるという事実に、しおりも棘で刺されるような想いを感じている。
前項でも「一郎は真っすぐ想いを伝え、しおりは正面から受け止める」と記述した。
この二人の物語がなぜ、こんなにもハートフルなのか。
それは一郎としおりがどこまでも純粋で、お互いに正面から想いをぶつけ、受け止めるからであろう。
ここでも一郎はしおりの感情を正面から受け止める。
契約はしおりだけの問題ではない。契約に関わる実家とか体質とか、全てひっくるめてしおりと一郎の二人で解決したい。
『おとなりに銀河』9話 より
その言葉に続くのは、プロポーズにも近い言葉であった。
年末温泉旅行と宣戦布告
年末は、ひょんなことから当選した温泉旅行に行くことに。
クリスマスを経て、更に仲が深まった二人は、足湯に浸かりながらタブレットの漫画作成ソフトで遊ぶ。
そんな中、しおりの母親はしおりの上京に反対であったことが伝えられる。
『おとなりに銀河』10話 より
(はい、ここのシーンはてぇてぇが詰まっている)
一郎は、その問題も一緒に解決したいと伝える。
翌日しおりの母親から電話がかかってくる。しおりは一郎のことを母親に伝えようとするが、言葉に詰まる。
一郎は、しおりから電話を受け取ると、宣戦布告する。
一般的に結婚における両家への挨拶、初顔合わせは重要であると言われる。そのような意味で、この一郎の言葉は、とても積極的、攻撃的なものとも捉えられるかもしれない。
『おとなりに銀河』10話 より
次なる展開は?
次巻以降の展開として大きく2つ考えられる。
1つ目は、契約の問題。2つ目は、五色家の問題。
1つ目の契約の問題は、2巻で一郎としおりの二人で向き合おうと語られた。
恋愛関係とは平等であるはずなのに、体調に影響を及ぼすように不平等な契約を結んでしまった二人。その契約がこの恋の始まりであったとはいえ、今後二人が関係を進める上で避けては通れない道である。
2つ目の五色家の問題は、2巻最後に宣戦布告をしたことから考えられる。当然しおりの母親はそのことを良い事とは思わないだろう。こちらは契約の問題に絡められて必ず突き当たるであろう。
主のイチオシシーン
かつて一郎に放った「寝ている人間の身体に触れる人だったなんて」という言葉。
しおりは、眠っている一郎のうなじを見て思わず触りたくなってしまう感情に駆られる。かつての言葉が自分自身に返ってくる。
恋愛は人間を変えるということを正しく表したシーンである。
『おとなりに銀河』6話 より
3巻の感想記事はこちらから。