葉のブログ

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【感想】『僕の心のヤバイやつ』Karte.57

『僕の心のヤバイやつ』の57話が更新されたので感想を書いていきます。

 

『僕の心のヤバイやつ』は「マンガクロス」で隔週で更新されているので、是非読んでみてください!

mangacross.jp

 

少年は鎧を纏っている

前話までは冬休みでしたが、遂に新学期が訪れました。そして、その門出となるような新学期初の夢は市川にとって最悪と言えるものでした。中学校に入ってから自分の好きな殺人事件ファイルなどが周囲に受け入れられず、引かれ、そして距離ができてしまった。その夢は、お正月に山田が家に来た時に卒アルを見たこと、そして今日から学校が始まるという事実から触発されたのかもしれません。

そして、目が覚めた市川は自問自答を繰り返します。この自問自答の相手として生み出されているのは、身長が高くて筋肉質な肉体を持った上裸の市川です。この姿は市川の中での『理想の自分』であるのではないかと思います。その『理想の自分』は家を出る市川に対して、「本当の自分をさらけ出したいのではないか?」と問いかけます。

少年はさらけ出したい

骨折中のため車で登校する市川。投稿してすぐに山田が話しかけてきます。山田は市川から貰ったストラップを市川とのお揃いと思っており(実際は市川は姉に渡すものと一緒に買ったつもりだった)、市川は付けないのかと尋ねます。片手で付けれない市川の代わりに山田がストラップを付けようとしますが、ここで山田の天然ぶりが炸裂します。

 予鈴が鳴り、学校に入らなくてはならない中、市川は山田に「変な感じがする」と言います。中学校に入り、周りに引かれ、鎧を纏った。学校は休みがちになったし、林間学校なども嘘をついて休んだ。でも最近は嫌いではない、と自分の心を語る市川に対して山田は「誰のお陰でもない」と言葉をかけます。その言葉に対して思わず出た「ありがとう」という言葉が、今まで伝えたかった「本心」であると気づきました。


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『僕の心のヤバイやつ』Karte.57

ただし、心をさらけ出すというのはハードルが高いものです。学校の中でビッチちゃんと遭遇したものの、山田と市川の微妙な雰囲気に「ヤッたのか」と疑惑をかけられてしまいます。

 

僕の心のヤバイやつ

この漫画のタイトルにもなっている「僕の心のヤバイやつ」というフレーズ、私自身は今まで、山田という天真爛漫な少女の存在自体であったり、それに対する市川の恋心だったりを想定していたのですが、57話を読んでその他に「思春期の中ですれ違い、さらけ出せない市川自身の想い」もあるのかなと思いました。

勿論今までのストーリーからも分かるように、市川が極端に嫌われているような描写はなくともクラスの中に市川とめちゃくちゃ仲のいい友達というのは山田を除いて居ません。

実際に思春期では、大人になってから思えば「なんで?」と思うような些細に思えることでも人間関係が大きく変化してしまいますよね。そんな大人社会よりも個々人の距離が近く、人間関係ありきで成立するような小さな社会である学校での自己防衛の手段は鎧を纏うことしかありません。自分の好きなものを否定され、レッテルが貼られてしまうと、その後はどのように人間関係を作っていけば良いのでしょう。市川が選んだ選択は、そのレッテルを利用して人間関係の構築を諦めることでした。自分の好きなものを理解してくれる人などいないという鎧はそのうち学校という空間をモノトーンのつまらないものにします。この行為は周りの人が市川を殺人の本を読んでいたことからヤバイやつと決めつけたのと同じように、周りは自分を受け入れてくれないというレッテル貼りなんですよね。

市川が何かをしたわけではないにせよ山田との出会いは市川にとって大切なのでしょう。恋心以前に市川は山田と居て楽しいと思えることこそが今までの学校生活を変えるものであり、自分を理解してくれる人が居る、人間関係を作ることを放棄してはいけないと思わせてくれるわけです。だからこそそれを行動で示すべく、感謝の言葉というのを伝えたかったのでしょう。自分の本心、好きなものが受け入れられないという経験を実際にしているために臆病にもなってしまう。「ありがとう」を伝えるのも「好き」を伝えるのも、何を伝えるにしても本心を伝えるというのは、それだけの重さがあるものだと思います。「どうせ理解してもらえない」ではなく、「理解してもらおう」と前向きに考える一歩だと私は思いました。

 

 

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