2024年12月4日にサンデーうぇぶりで『尾守つみきと奇日常。』最新46話「つみきさんとレシーブ練習。」が更新されたので感想と考察を書いていこうと思います。
前回の感想記事はこちらから。
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46話「つみきさんとレシーブ練習。」感想と考察
球技大会の練習回
どうやら球技大会が近づいているようで、友孝くんとつみきさんはクラスの人とバレーボールを練習する。なんとなく前もっての偏見として、つみきさんはバレーが得意(運動神経が良い描写は多い)で、友孝くんは運動が苦手では無かろうか。
そして事実、私の予想と同様に友孝くんはバレーが苦手そうである。一方でつみきさんは得意な雰囲気がプンプンである。
そう言えば、以前の漫画内の描写で、幻人と人間の体育の授業が分かれている(幻人限定の体育の授業がある)ことが描かれていた。しかし、今回の展開を見るに、球技大会は人間と幻人の混同競技の様である。
Ⓒ小学館 2024
森下みゆ『尾守つみきと奇日常。』46話
そして、球技大会は一年間の学校生活を絞める、最後のクラス行事でもある。そのためつみきさんは力が入っている。友孝くんもクラスの足を引っ張るまいと、一人練習に残る程に真剣に取り組んでいるのだ。
つみきさんの感謝
そんな一人練習を続ける友孝くんの下に、つみきさんが訪れるのだ。練習を手伝うつみきさんの口から語れるのは、ボランティアの際に崖を登ってくれたことに対する感謝である。
つみきさんが語る自分の感情は、以前感想記事で予想した通りのものだった。気になる方はもう一度下の記事を読んで欲しい。
つみきさんは幻人である。治癒能力を有しており、運動神経も通常の人間に比べると高い。そんな彼女が幼い頃から、自分とは異なる”人間”と暮らす。その代償は、自身の怪我や痛みに対して鈍感になるということだ。
同じ怪我を負った。人間も幻人もその痛みは同じはずである。しかし、つみきさんには治癒能力がある。人間とは異なり、放っておけば治るのだ。だから、彼女は痛みに対して感情を表に出すことを躊躇うようになった。それも本人が意識しないほど、無自覚に。
Ⓒ小学館 2024
森下みゆ『尾守つみきと奇日常。』46話
友孝くんはそんなつみきさんを人間と同じ”一人の存在”として扱った。それは、正しくつみきさんを大切に扱う行為に他ならない。だから、つみきさんは友孝くんが一人の存在として扱ってくれたその行動がどうしようもなく嬉しかったのだ。
二人のバレーボールラリー
さて、上述してきたつみきさんと友孝くんの会話。この会話はバレーボールのラリー練習をしながら行われている。ここで一つ、比喩的な解釈をするのであれば、このラリーこそ友孝くんとつみきさんのコミュニケーションを表している。
友孝くんは自分に自信が無い。好きも分からないし、得意なことも分からない。コミュニケーションも特段上手ではない。しかし、それは彼の主観での話である。コミュニケーションは相手が居て初めて成立する。どんな暴投でも拾ってくれれば、それはコミュニケーションである。
正しく、つみきさんが友孝くんのボールをどんなものでもキャッチしていく。これも普段のコミュニケーションに置き換わりそうである。
Ⓒ小学館 2024
森下みゆ『尾守つみきと奇日常。』46話
そして、友孝くんはどちらかと言えば、人とは一定の距離を置くタイプの人間だろう。それ故に、彼に届かないボールだってあった。しかし、つみきさんの感謝と共に放たれたボールは、しっかり一歩踏み込んでレシーブをした。
これも、友孝くんがつみきさんの過去の話や感謝をしっかり受け止め、二人の距離が少しだけ縮まったことを示しているのだろう。そして「ナイスレシーブ」と叫ぶつみきさんは目を大きく開いて嬉しそうである。
このようにして、崖に落ちることで見えた”つみきさんの鈍感さ”は二人の距離を縮めるような顛末で締めくくられた。数話に跨った伏線の回収である。
主のイチオシシーン
コミュニケーションの取り方は人それぞれだ。一瞬で距離を詰める人も居れば、一定の線引きを常にする人も居る。ただし、共通して言えることは「一歩踏み込むこと」はとても勇気がいることなのだ。
ここで重要なのは、コミュニケーションは双方向のものであるということ。その距離感が嫌な時は敢えて一方通行にしたりもするだろう。しかし、本来はその踏み出した勇気に対して、相手側も意思表示をする。かくしてコミュニケーションは成立すると考える。
そして、そのコミュニケーションは踏み込む一歩が近づけば近づくほど、大切な存在であることを示すように思える。だから、つみきさんのこの言葉は、友孝くんへの感謝を伝えると同時に、「友孝くんはその感謝を伝えなくてはいけない人」であることを示している。
Ⓒ小学館 2024
森下みゆ『尾守つみきと奇日常。』46話