葉のブログ

忙しい合間にも漫画とか映画とか

MENU

【感想と考察】『【推しの子】』52話「カレシカノジョ」【漫画】

 2021年8月5日発売の「ヤングジャンプNo.36&37合併号」で『【推しの子】』の最新52話「カレシカノジョ」が掲載され、更新されています。

 前回の感想記事はこちらから確認できます。 

isoisogingin.hatenablog.com

 

 以下のリンクは現在発売されている最新4巻のものになりますが、8月18日に5巻が発売予定なのでそちらの方も要チェックです。

 

 因みにですが、私が書く記事の『【推しの子】』という作品における前提と言いますか、スタンスは以下の記事に主に記載してあります。

isoisogingin.hatenablog.com

 

 

52話「カレシカノジョ」感想と考察 

 「カノジョ」

 倒れたアクアはこどおじである五反田監督の家にお世話になっています。その中であかねはアクアに対して手料理を披露したり、あーんをしたりと所謂「カノジョ」としての振る舞いをしています。

「君が私を助けてくれたみたいに 私も君を支えたい」

『【推しの子】』52話 より

  上記の言葉は最新52話でのあかねの心理描写から引用したものです。まぁあかねからアクアに対しての気持ちは分かりました。自殺を考えるほどどん底に居た自分をアカネを文字通り救ってくれたのはアクアであり、そこから恋心が目覚めるという展開も分からなくない。実際、異性としては「ナシではない」とあかね自身が過去に答えており、今話でモノローグとしてはっきりと描写されました。


f:id:isoisogingin:20210805005845j:image

『【推しの子】』52話 より

 

「カレシ」

 そんなあかねに対するアクアの反応としては、少しずつ許容される範囲が広がっているというようなものでした。重曹ちゃんに対しては見せたがらなかった自身の過去の演技を自分が居ないところなら見ていいと言ったり、自身が演技をする理由として「ある人を殺したい」という事を打ち明けたり。

 今まで私の掲げる理論として「ラブコメ(恋愛もの)は一方向の矢印では成立せず、両方向の矢印が成立して初めて納得できる」というものがあり、それに基づいて先週もアクアからアカネに対する好意の矢印が見えないという話を記事として書き殴った訳です。しかし、恋心かどうかは置いておいてアクアのアカネに対する許容範囲は確実に広くなっていると言えるでしょう。

 

「役者」と「演技」

 さて、アクアは感情演技が出来ない一方で持ち前の器用さで「それっぽい演技」が出来てしまうと言います。しかし、それっぽい演技とは強烈な才能がなくとも、演出側の意図をくみ取り、それに合わせた演技をするからこそ成立するもの。

 今回の「東京ブレイド」の舞台において求められているものは「強烈な感情演技」。であるなら、アクアはそこから逃げることは許されず、次回以降は五反田監督との修行編へと行く訳です。


f:id:isoisogingin:20210805005850j:image

『【推しの子】』52話 より

 

 さて、ここで問いかけとしてあかねはアクアとは反対のタイプと言えるでしょう。演技の理由を尋ねられて「楽しいから」と即答したり、アクアも羨むほどの狂気的な才能があったり、アクアの寝言からアイの真実に近づいたり。

 つまりあかねは天性の「役者」なのです。あかねはベランダでアクアと話している際に「ビジネス上の彼氏彼女」と前提を自身で置いた上で「私くらいはありのままの君を認めてあげなきゃ」「私も一緒に背負いたい」と言った発言をしています。

 ????←私の頭の中

 え、いつアクアが自身の身の内を曝け出したん? と一言。勿論、アクアは演技をする理由として「もし」という仮定をつけてから「人を殺すため」という言葉を並べました。それに対して、すぐにこんな言葉出てくるか?? 普通驚いたり、冗談だと笑ったりといった感情が出てこんか?


f:id:isoisogingin:20210805005906j:image

【推しの子】』52話 より

 アクアも「マトモじゃない」と評するように黒川あかねはマトモではないのかもしれない。読者の見ている範囲を超えた、論理を超えた感情を持っているのかもしれない。しかし、あくまで私が一読者としてこれらの言動を見て、そして黒川あかねに対して考察することがあるとすれば、それは「カノジョ」という「演技」なのだ。

 あかねは妄想という名の推理力を持ち、アクアの寝言からアイの死とその真相に気が付いたような素振りをみせた。つまり、あかねは自分だけが知るアイの真相を前提として、それを抱えるアクアの心の奥底を推察し、それらを抱えたアクアを「全て受け入れる」という完璧な理解者、すなわち理想の「カノジョ」という方向性を決めて「演技」をしているのだ。

 そして、その対価としてアクアに求めるのは有馬かなと姫川のコンビに勝つための演技。果たして本当の演技バカの天然か、ビジネス彼氏彼女というラインを超えないための計算された保険か。なんにせよあかねの思考や行動が偶に急ハンドルを切るが如く急展開を迎えるので、個人的には感情移入も少々難しいというのが本音だ。

 

 そして、あかねがもし「全てを知って受け入れるタイプ」を理想とするなら、個人的にそれは間違いであると思うのだ。受け入れられてスッキリするくらいのものなら、ルビーや重曹ちゃんに対して打ち明けているだろう。今回のポイントはアカネが「勝手に真相に近づいている」ということだ。誰もそんなこと頼んでいないのである。アクアからしたらどれだけそのようなアプローチをされても余計なお世話なのだ。

 個人的には、重曹ちゃんのように何も知らず、しかし重曹ちゃんの努力する「姿」で、その行動の結果で、間接的にアクアが認められる。そんな直接的ではないけど支え合う感じが好みなんすけどね。これも前回の記事で書きましたかね。今回はこんなところで。

 

今週の重曹ちゃん

 驚きの出番なし!

 ただ登場しない分だけ、アクアがあかねと協力して演技を磨く分だけ、今後重曹ちゃんの胃が痛くなるような展開が来るかと思うと。皆さん衝檄に備えよ。