葉のブログ

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【感想と考察】『【推しの子】』102話「アイドルと恋愛」【漫画】

 2022年12月8日発売「ヤングジャンプNo.2特大号」で『【推しの子】』の最新102話「アイドルと恋愛」が掲載・更新されています。

 前回の感想記事はこちら。

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 私は重曹推しです。

 記事の内容やそれに含まれる感想もだいぶ重曹寄りになることはご容赦ください。

 それについて、ちょうど一年ほど前ですが、『【推しの子】』の今後の展開について割と本気で考察した記事を書いていますので、今後の展開まで予想したい方は以下の記事をチェックしてください。この記事で書いてある考察などを前提にこの記事のように各週の感想記事も作成しています。

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102話「アイドルと恋愛」感想と考察

重曹の炎上

 さて、『【推しの子】』では親の顔より見た炎上展開。前回、無事(?)に大人の男性と二人きりの状況で純潔を守り抜いた(この表現キモいか)重曹であったが、一方でバッチリ週刊誌に写真を撮られたのだ。

 このあからさまでよく見る展開に名前でも付けてみてはどうか。

 「今ガチ」から始まり、既に2.3回は見た気がする炎上展開。

 上の仮称「【推しの子】ハッピーセット」の展開で言うならば、①と②の間くらいである。まぁ、読者の予想に反するような展開ではなく、順当に重曹が炎上に向かっているという事だけは読んでいて理解できる。

 改めて、今回の展開で抱いた感想と言えば、「あ、週刊誌のスキャンダルってこういう感じで事務所に行くんや」といったものである。そして、その表現は現実のスキャンダル同様なのか、漫画のための空想なのか分からない。

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『【推しの子】』102話 より

MEMは良い女

 大枠の展開では上述したように語るところが少ない。

 しかし、102話の展開で1つ動きがあったとすれば、MEMの諫言である。

 前半のルビーのモノローグなどは割とどうでも良い。B小町やアクアに向けた言葉ではなく、展開や状況を補足するための機械的な独白である。

 その内容自体も、アイドルの恋愛と言えば最近ではAKB岡田奈々さんが話題を搔っ攫った。声優やアイドルと言った芸能の恋愛観について赤坂アカがルビーを通じて物申しているだけである笑

 なので、前半数ページは漫画の展開として読むべきところは無いと感じる。

 

 一方で、中盤からはMEMを中心とする苺プロの様子が描かれる。重曹が暗いこと、それをMEMがどうにかしようとしていること。

 しょんぼりしたデフォルメMEMがまず可愛いのだ。

 (突然の感想の質の変化)

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『【推しの子】』102話 より

 そんなMEMはアクアに対して的を得た言葉をかける。

 重曹がアクアの為にアイドルをしているのは正しくそうなのだ。始めた動機も、続ける理由も、全部アクアの為である。『【推しの子】』を今まで読んだ読者なら誰もが思っていたことをアクアにぶつけるMEMは読んでいてスッキリするものがある。

 正しく、MEMの言う通り。

 重曹の動機はアクアなのだ。

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『【推しの子】』20話 より

展開の考察

 以下の2つが今後の展開のポイントになる。

 1つ目は、スキャンダルによる影響の克服だ。週刊誌を事前にもみ消さない限り、重曹のスキャンダル展開は免れない。ミヤコさんが頭を悩ませている様に、これは大きな火種になる。

 そうすれば、ネットでの炎上やそれに応じた重曹の起用回避に繋がる。と言うより、その展開は恐らくやってくる。そうなった時に、それをどのように克服するか、である。今まではSNSへの動画投稿や番組を通して1つのコンテンツにすることで克服してきた。

 ただ、そのやり口は酷似していて(ルビーが意図してアクアの手順を真似したというのもあるが)、それを同様に見せられても私としては爽快感は無い。だから、親の顔より見た炎上展開にも、何かしら面白い解決をしてほしいものだ。

 

 2つ目は、アクアの関与である。MEMの言葉を受ける中で、アクアのスタンスにも揺らぎが見られた。(自分は関わってはいけない人間だ、重曹の真っすぐな感情を受け止めれな、等々)

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『【推しの子】』102話 より

 少し前に復讐に生きることを決めたアクアであるが、ここで重曹を見放すような人間でないことも確かなはずである。本当に見放すような人間なら、「そうだろ......」と自分に問いかけたりしないのである。

 と、なるとアクアがどの段階で関与するのか。

 重曹に自分が関わっているとは分からないような形で(ぴえヨンに変装した様に)関与するのか、これを機に重曹と正面から想いをぶつけ合うのか。個人的にはいつか後者の展開が来てほしいと願いつつ、それは今回では無いのだろうという読みである。

 

今週の重曹ちゃん

 今週はこの1コマ。

 重曹とMEMの関係性を表していて、抵抗するのを諦めた重曹の表情と無理やり盛り上げようとするMEMの表情が両方とも愛おしい。

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『【推しの子】』102話 より

次回更新は

 次回更新は2022年12月22日(木)である。

 来週は休載のようなので、要注意だ。

 

【感想と考察】『僕の心のヤバイやつ』Karte.110「僕は伝えたい」【漫画】

 全人類が待っていた。

 全読者が待っていた。

 だから、語るまでもない。

 それでも語らせてほしい。

 安定の神回で間違いない。

 読んでないなら先に読んでほしい。読んだことがないなら、アニメ化の前に知って古参になってほしい。それほどに約束された神回なのだ。

 

 2022年12月6日にマンガクロス | 秋田書店の新作漫画が無料で読める! (mangacross.jp)『僕の心のヤバイやつ』最新110話「僕は伝えたい」が更新されたので感想と考察を書いていこうと思います。

 前回の感想記事はこちらから。

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この展開を何年待っていたか

 修学旅行と言えば、中学生最大のイベント。

 市川と山田の中学生活最大の山場にして、中学生を描く『僕ヤバ』という作品においても最大のイベントと言っても過言では無い。

 山田が大好きな作品のオーディションを断ってまで参加したのは、市川と一緒にという気持ちだけではなく、友達と一緒に中学生としてのイベントを楽しみたいという気持ちもあったはずだ。

 そんな過去最高のイベント。

 当然、恋愛的な意味でも大きな意味を持つ展開が来るのは予想が難しくはない。思ってみればここまで長い展開であった。

 ちなみに1年前の2021年12月にはホワイトデー回の前振りが終わったくらいである。年末年始を市川と山田のすれ違い(笑)にドキドキしながら迎えた記憶がある。

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 2年前の2020年の12月はキーホルダー回であった。山田が市川の骨折の原因を作ってしまったと落ち込む回である。

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 こう考えると私自身『僕ヤバ』を追って、それなりの時間が経過した。その分だけ、作品や市川山田に積もる想いもあるし、待っていた展開もある。

 そして桜井のりお先生はオールウェイズいつも最高の展開を用意してくれるのだ。市川と山田が真っすぐお互いに向き合うように、真っすぐ展開をぶつけてくれる。

 読んだ瞬間の感動を文字として表せないので、ブログを書いている身としては失格なのだが、本展開は是非とも二人の物語を追う中で読んでほしい。

修学旅行と言えば

 修学旅行の舞台となっているのは京都。

 その中でも鳥居と狐で有名な伏見稲荷大社である。

 私自身も伏見稲荷は数回訪れたことがある。

 これは私が現地で撮った写真である。どこまでも続く鳥居に圧倒されると共に、夜に来たら怖いな、なんて思った。

 そんな伏見稲荷を班行動で巡るのが市川達である。

 市川は山田と話したい。しかし、班行動となるとなかなか二人で会話する時間が取れないという問題が発生する。加えて、班にはカップルを祝いたい安藤カンナが同行している。

 そんな中、鳥居の分岐点で山田は市川を誘うのだ。

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『僕の心のヤバイやつ』Karte.110 より

 この分岐点も知ってる景色だああ!!!

 恐らくここである。↓

 写真では見切れているが、この右側を山田と市川は進んだのだろう。一方で安藤ら班のメンバーは右側へと進んでいく。

山田の両天秤

 山田は尋ねるのだ。

 「市川は楽しんでいるのか」と。

 しかし、市川にはそのままに出来ないことがある。それは、山田自身が修学旅行を楽しめていないことだ。

 山田は大切なオーディションよりも修学旅行を優先した。以前から記事で書いているように、オーディションと修学旅行の天秤は中学生には重すぎる選択だ。当然、片方を選んだからと言って、もう一方を捨てきれる訳でもない。

 だから山田の気持ちは理解できる。

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『僕の心のヤバイやつ』Karte.110 より

 しかし、市川は許せないのだ。

 山田は「市川が楽しくなるように」修学旅行に来たのだ。かつて林間学校を休んだこと、学校が嫌いだったこと、市川が良い人であること。山田は多くのことを知っていて、それ故に市川を最優先にしたのだ。

 もちろん、市川は山田に対して怒っている訳ではない。ただ、それほどまでに想われているという事実、そして市川のために行動する山田という一人の人間と向き合うのだ。

市川の想い

 自分のことをこれほどまでに想っている少女を前にするからこそ、市川も正面から想いを伝えるのである。

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『僕の心のヤバイやつ』Karte.110 より

 今見ている景色も、今ある人間関係も、市川を取り巻くほぼ全てのものが山田無くしては成しえなかった。新しい友達ができたことも、学校が好きになったことも。全て山田が市川の学校生活を、人生を変えたのである。

 それほどまでに市川にとっても山田の存在は大きいのだ。

 そして、それほど市川にとっては大きな存在であると同時に、異性として好きであることも認めざるを得ない。かつて、保健室のベッド下で気がついた感情は、市川自身の成長と山田との歩みを経て、ついに花が咲いたのである。

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『僕の心のヤバイやつ』Karte.14 より

 だから市川は伝えたいのだ。

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『僕の心のヤバイやつ』Karte.110 より

 安藤もとい厄介なクラスメイトが居ることなんて気にならないくらいの正面からの告白。読者がずっと正座で待機していた展開が遂に来たのだ。

どうでも良い豆知識

 ちなみに、稲荷大社の神様の正式名称は「宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)」というらしい。食べ物を司る名前で、元々は穀物の神様で、五穀豊穣の神様であったよう。

 なんとも、大食いの山田にぴったりの神様である笑

主のイチオシシーン

 市川と山田の想いを知っているからこそ、市川と山田が抜け駆けした必死に無駄な抵抗(誤魔化し)を行う半沢さんが可愛すぎて推せる。

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『僕の心のヤバイやつ』Karte.110 より

次回更新について

 『僕の心のヤバイやつ』は、マンガクロス | 秋田書店の新作漫画が無料で読める! (mangacross.jp)で隔週更新である。次回更新は2022年12月20日予定だ。

 

 

【感想と考察】『【推しの子】』101話「窮地」【漫画】

 1か月程度の休載期間が明けて更新されました。

 2022年12月1日発売「ヤングジャンプNo.1特大号」で『【推しの子】』の最新101話「窮地」が掲載・更新されています。

 前回の感想記事はこちら。

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 私は重曹推しです。

 記事の内容やそれに含まれる感想もだいぶ重曹寄りになることはご容赦ください。

 それについて、ちょうど一年ほど前ですが、『【推しの子】』の今後の展開について割と本気で考察した記事を書いていますので、今後の展開まで予想したい方は以下の記事をチェックしてください。この記事で書いてある考察などを前提にこの記事のように各週の感想記事も作成しています。

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101話「窮地」感想と考察

芸能界の人間

 あれよあれよという間にシマカンの仕事場に連れ込まれた重曹。当然の様に、”仕事場”には普通のアパート(マンション)であり、ベッドまで置いてある。そこまで見て重曹は連れ込まれているという事実に気づくのだ。

 結局のところ芸能人は遊び人が多い。事実としてどうかは置いておき、『【推しの子】』という漫画ではそのように描かれている。

 シマカンもその中の一人である。

 結婚していながらもお互いに不干渉で遊びまわり、高校生である重曹に優しい言葉をかけながらも関係を迫る。主である私がそれを歪であると感じてしまうのは、私が「芸能界」に踏み入っていないからなのかもしれない。

 しかし、重曹とて芸能界の人間である。

 気づいた時点で連れ込まれた事実は変わらない。そのトークスキルと愛嬌、そして女性としての最終手段で乗り切る算段を描くのだから大したものだ。

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『【推しの子】』101話 より

重曹の可愛いが詰まっている

 本来であるならば「今週の重曹ちゃん」のコーナーで取り上げるべき内容ではあるのだが、本ブログを少しでも重曹要素マシマシにするためにこちらでも触れたい。

 重曹は根っからの女優だ。

 カメラの重圧を跳ね除け、自分以外の何かにすっぽり収まる。自分ではないそれを演じる快感を覚えてしまい、それに焦がれるのである。

 ただ、重曹は正直なのだ。

 本ブログを読んでくださる方なら、”ツンデレ”という属性はご存じであろう。好きな人の前ではツンツンして本心と真逆のことを言ってしまう。重曹は典型的なツンデレキャラであると言える。

 そしてツンデレキャラは正直である。

 素直になれないだけ、口から出る言葉が逆なだけなのだ。逆を言うと、好きな人の前で放つ言葉の逆を取れば本心なのである。騙そうとする意図なんて介在しない。

 そしてツンデレキャラは、好きな人を前にしなければ、素直で正直なのだ。今まで画かれたように、重曹は何事にも正面から向き合う。一途という言葉がよく似合う。それこそ、女優業に対しても、アイドル業に対しても、自身が何を出来るかを考え、その仕事と向き合う。

 その性質は恋愛でも変わらない。

 仕事がもらえる。女優に戻れる。それらの甘い言葉を囁かれたとしても、重曹はアクアへの想いを偽ることは出来ない。本人に言えないだけ、素直になれないだけで、その想いは本心であり、重曹は自分に真っすぐなのだ。

 散々考えた断り文句は空の彼方に消え、涙ながらに吐いた「好きな人が居るんです」と言う言葉は、決してアクア本人には言えない言葉である。

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『【推しの子】』101話 より

マスコミの嫌な所

 私の持論であるが、「自分と全く同じ景色を見ている人は居ない」ということが言えるだろう。屁理屈のようであるが、一見同じ景色を見ている様でも、人間が二人居れば角度やら高さやら何かしらが異なるはずである。「近しい景色」を観ることは出来ても、「全く同じ景色」を観ることはできない。

 ある円錐を下から眺めれば円形であるが、横から見ると三角形に見えるのと同じ理論だ。そして、マスコミはそれを意図的に行う。敢えて事実を捻じ曲げるような描き方をする。それは『今ガチ』の炎上の火種にもなったことで覚えているだろう。

 重曹はシマカンとの関係を持たなかった。事実としては、シマカンの仕事場で、仕事の話をして、恋愛の話をした。しかし、マスコミはそれを許さない。「シマカンの仕事場」と「重曹と二人」と言う情報から、あることないこと書き殴るのだろう。

 前提として、シマカンと二人で家に入った重曹は当然もっと考えるべきではあった。しかし、それが出来ないくらい日々の仕事などでマイナス方面の思考になっていたことは描かれているし、そのような思考になった時に人が判断力に欠けることも、それこそあかねの自殺未遂などで描かれている。

 だから、重曹にも悪い部分はありながら、そこに至るまでの原因は様々なものが絡んでいるのだ。重曹は悪くない訳ではないが、そこまで責める気にもならん。

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『【推しの子】』101話 より

 展開的に言えば、休載前(およそ一か月前)に予想した展開通りと言える。恐らく多くの読者が予想していたありきたりのものだ。唯一良かったところとしては、重曹からハッキリとした断り文句、そしてアクアへの想いが聞けたことである。

 果たして、ここから予想が裏切るような展開はあるか。

 個人的には、重曹が炎上の中心になることでアクアがどのように絡むかに注目している。(というより、アクかなにしか注目していない)

今週の重曹ちゃん

 勿論重曹が炎上に巻き込まれるのは良い気はしないが、重曹成分マシマシなだけ嬉しいものがある。一生重曹中心に展開してくれ。

 それは置いておいて、完全に悪いホストに捕まった風な文言を並べる重曹ちゃん。それでも涙を流しながら「好き」と言えるほど想っているのだ。アクアなんて辞めて、俺の彼女になってくれんか????

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『【推しの子】』101話 より

次回更新は

 次回更新は2022年12月8日(木)である。

 

 

【感想と考察】『僕の心のヤバイやつ』Karte.109「僕は気が付いた」【漫画】

 2022年11月22日にマンガクロス | 秋田書店の新作漫画が無料で読める! (mangacross.jp)『僕の心のヤバイやつ』最新109話「僕は気が付いた」が更新されたので感想と考察を書いていこうと思います。

 前回の感想記事はこちらから。

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109話「僕は気が付いた」感想と考察

修学旅行定番お風呂イベント

 日常生活では人間は服を身に纏う。服で隠された部分は「見えない場所」であり、個人差はあれど性別に関わらず、そこへの関心は共通するようだ。つまり、お風呂イベントの到来である。

 何故かクラスの異なる足立まで居る。その理由が、「間違って女風呂に入ろう・・・とした」なのがなんとも足立らしい。

 そんなこんなで足立と神崎のち〇こバトルに意図せず挟まれる形となった市川。当然、市川はそういうことをするタイプではない。ゆっくり落ち着きたい入浴の時間は市川にとっては災難であっただろう。

 (それも含めて修学旅行感ではある)

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『僕の心のヤバイやつ』Karte.109 より

 (確実にチェーンソーマンのオマージュ笑)

 風呂上がりの市川は、同様に風呂上がりの山田と遭遇する。実は山田も市川も互いの家でお風呂を借り合う仲ではあるので(しかし、付き合ってはいない)、漫画的には初めて見るような光景ではない。

 それでもお風呂上がりの姿と言うのは気まずくなるもの。加えて、山田が何かを隠していることとか、ギャルの安藤の監視から逃れることなど様々な思惑が頭を過ぎる。

 しかし、ここでも足立の存在が光る。

 空気の読めない(読まない)足立は、市川に対してお風呂場で行われた「ち〇ぽバトル」について語るのだ。当然、近くに居た山田は逃げるようにして遠ざかってしまう。

 この行動も足立らしさが凝縮されていて好きである。

市川の「山田像」

 主の個人的な意見としては後者だ。オーディションはマネージャーや両親など多くの人が関わっているだろう。演技を評価してくれた人だって居るのだ。だからこそ、山田の中にオーディションを休むという選択肢はない。ただ、その中で市川やクラスメイトと修学旅行を共に出来ないことに泣いていると解釈した。

【感想と考察】『僕の心のヤバイやつ』Karte.107「僕は楽しみ」【漫画】 - 葉のブログ (hatenablog.com)

 上記内容は、私が2話前に書いた感想記事からの引用である。正直、私は山田が修学旅行を欠席してオーディションに参加すると予想していた。

 だからこそ、前回108話で山田が修学旅行に出席していたという事実には驚きを隠せなかった。『君オク』という大好きな作品であり、主演級という確実に自身のキャリアを広げるチャンスである。それらを蹴って修学旅行に出席する。

 勿論、当時感想記事にも書いた通り、中学生にとって修学旅行というイベントは特別なものであり、一生の思い出になり得るものでもある。中学生が天秤に掛けるにしては重過ぎる二択ではあった。

 このように私が、一部の読者が描く『山田像』はある意味的を得ているはずだ。なぜなら、市川自身も同様の山田像を描いていたことが明言されたからだ。

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『僕の心のヤバイやつ』Karte.109 より

 そして、同じ『山田像』を持っていたからこそ、市川も悩むのだ。

 市川は女優業に真剣に取り組む山田を尊敬している。恋愛感情とリスペクトは併存するものであり、完全に切り分けられないものでもある。市川が山田を好きだと想う要素の一部に仕事への姿勢があるのは間違いない。

 上記を示すシーンは今までにも何回も描かれている。ハッキリと明言するのは81話山田の撮影見学の回である。市川と山田の恋愛模様は、山田がバスケで鼻を怪我したところから始まった。そしてその当時から、市川は山田のことを大人だと評する。明確な恋心を自覚する前から、山田にはリスペクトを持っているのだ。

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『僕の心のヤバイやつ』Karte.81 より

 だからこそ、市川は「山田が市川のせいで仕事ではなく修学旅行を選んだ」という仮定が気持ち悪いのだ。

山田の本心

 結局どこまで一人で悩んでいても結論は出ない。

 山田の本心は山田にしか分からない。市川が思考を巡らせた所でそれは仮定でしかない。しかし、下の階のベランダから山田が『君オク』の演技をしている声が聞こえてくる。

 山田は本当に天秤に掛けた上で修学旅行を選択したのか。

 その選択に市川の存在が関わってしまってはいないか。

 自惚れかもしれない。それでも市川から見た山田は仕事を優先するようなタイプで、一方で市川の過去を知っているからこそ修学旅行を優先してしまうようなタイプなのだ。

 そして、もし自分の為に修学旅行を選んだのだとしたら、それを市川はどのように思えばよいのだろう。市川はそのような気の遣われ方が嫌いだ。

 二人は純粋に正面から言葉を交わしてきた。

 だからこそ、この場でも本人から本心を聞くことを選ぶ。そして、本心をぶつけてもらうためには、まずは市川の方から本心をぶつける必要があるだろう。

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『僕の心のヤバイやつ』Karte.109 より

 このように次回は、山田が一人で抱えた苦悩が吐露されるだろう。今のうちにハンカチを用意しておいた方が良いのかもしれない。

主のイチオシシーン

 女性陣ですら直視できない山田のお風呂回。

 そこで堂々としているちー様が良い味を出している。 

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『僕の心のヤバイやつ』Karte.109 より

次回更新について

 『僕の心のヤバイやつ』は、マンガクロス | 秋田書店の新作漫画が無料で読める! (mangacross.jp)で隔週更新である。次回更新は2022年12月6日予定だ。

【感想と考察】『【推しの子】』100話「営業」【漫画】

 祝100話!!

 なんだかんだ言いながら、重曹を追いかけて早100話。

 2022年11月10日発売「ヤングジャンプNo.50」で『【推しの子】』の最新100話「営業」が掲載・更新されています。

 前回の感想記事はこちら。

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 私は重曹推しです。

 記事の内容やそれに含まれる感想もだいぶ重曹寄りになることはご容赦ください。

 それについて、ちょうど一年ほど前ですが、『【推しの子】』の今後の展開について割と本気で考察した記事を書いていますので、今後の展開まで予想したい方は以下の記事をチェックしてください。この記事で書いてある考察などを前提にこの記事のように各週の感想記事も作成しています。

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100話「営業」感想と考察

常識ある大人は未成年を連れ出さない

 上述したが、『【推しの子】』も記念すべき100話に到達したようだ。当然ながら、記念すべき100話の中心は重曹なのだ。(過言)しかし、内容としては100話なのを疑うレベルで盛り上がりには欠けると思ってしまう。

 アイドルで居ることに意味を見出せない重曹。そんな重曹の前に(読者的には)明らかな釣り針として登場したシマカン。今話で明らかになったがシマカンは既婚者であるようだ。

 そんなシマカンと連絡先を交換した重曹。

 B小町の脇役としてのラベリングを決定づけられた重曹にとって役者の世界は眩しく見えるのだろう。それは懐かしさであったり、本心から演じることが好きであったりすることが影響しているのだろう。

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『【推しの子】』100話 より

 内部政治だ、コネだという単語を嫌っていると語る一方で、個人的なつながりを求める。シマカン本人に悪気があろうがなかろうが、客観的に見れば矛盾しているように感じる。そう、客観的に見た状況は必ずしも主観と一致するとは限らない。

 ↓この台詞に至ってはエロ漫画の導入か何かか?と。

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『【推しの子】』100話 より

 アルコールは人を狂わせる。素面の読者にとっては鳥肌ものだろう。普通の常識ある大人は未成年を個人的に連れ出したりしないのだ。それこそが芸能界の歪みの一つではあるのだろう。

芸能界のプライバシー

 アイドルと言えば「恋愛禁止」を掲げるグループも多いだろう。実際、ユニコーン信奉だとかいうそれなりに気持ち悪い文化も耳にしたことがある。

 実際、芸能界には既に上述した通り、内部政治だとかコネだとか、そういう人間関係が多大な影響を持つ。そのために個人的な繋がりを持つような魔の手が襲い掛かる。

 それを守るためにマネージャーだとか事務所が存在するのだ。

 当然、「魔の手」にかかりやすいのがアイドルという職業。容姿が可愛いだけでシマカンの様に、倫理観がバグって連れ出しちゃうような人だっているのだ。それを管理するために厳しく管理しているようだ。

 (それこそ、ルビーがギャグ顔になるくらいには)

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『【推しの子】』100話 より

芸能界に跋扈するパパラッチ

 そして芸能界に居る彼ら彼女らを正しく「人権をないもの」として扱っているのが、スキャンダル記事を発行する出版社である。家まで張り付いて、あれこれ暴いて何が楽しいのか私は理解できない質であるが、実際に楽しいと感じる人も居るのだろう。

 その点で、シマカンの家(事務所?)に楽し気に入り込む重曹という構図はこれ以上ないネタなのだろう。先程も言ったが、主観的な図と客観的な図は異なる。ましてや出版社は意図的に主観と客観をズラすような画を撮る。

 確実に重曹のスキャンダルは波紋を呼ぶ。主に、勢いに乗っていたB小町というアイドルグループに。そして重曹が戻りたいと思ってきた役者界に。

 それを想像できないのが重曹が未成年(20歳未満)たる所以であり、それを意図的か意図せずか止めない時点でシマカンは終わっている。表札がスタジオになっていることから常習犯の可能性もマシマシである。

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『【推しの子】』100話 より

 しかし、未来軸で重曹が映画の役者であることが描かれているので、重曹は少なくとも将来的には世間に受け入れられるのだろう。(ガチのスキャンダルで、あの映画が重曹にとっての復帰作品になる可能性も微レ存)

今週の重曹ちゃん

 重曹が男の部屋に連れ込まれた状態で3週間の休載期間が入るの、精神衛生上本当に良くない。そして散々、重曹の周りにもっとアレコレしている未成年が描かれながらも、スキャンダルの対象になるのは重曹なのも芸能界らしいというか、漫画らしいというか、『【推しの子】』らしい。

 ここらへんも、既婚者だから客観的には不倫状態でよりダメなポイントなのが笑える。

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『【推しの子】』100話 より

次回更新は

 どうやら『【推しの子】』は3週間ほど休載の様です。

 次回更新は来週12月1日(木)の予定です。

 

 

【感想と考察】『僕の心のヤバイやつ』Karte.108「僕は気が付かない」【漫画】

 2022年11月8日にマンガクロス | 秋田書店の新作漫画が無料で読める! (mangacross.jp)『僕の心のヤバイやつ』最新108話「僕は気が付かない」が更新されたので感想と考察を書いていこうと思います。

 前回の感想記事はこちらから。

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108話「僕は気が付かない」感想と考察

完全に展開予想を外した回

 前回感想記事を読んでもらえれば分かると思うが、私の予想は「山田が修学旅行を休んでドラマのオーディションを受ける」というものであった。しかし、実際にはその逆の展開、「オーディションを辞退して、修学旅行に行く」展開となった。

 つまり前回最後の山田の涙は、オーディションを諦めることへの涙であったのだ。

 一方は、自分が大好きな漫画。市川との関係を繋いだ漫画。女優の道の足掛かりになる主演級のオーディション。

 もう一方は、好きな人との想い出。友人との想い出。大切な学校生活。

 中学生が天秤に掛けるには重すぎる二択。私は仕事の方を優先すると考察した訳だが、それは所詮大人の言い分。本編でバヤシコが言うように、「山田が決めたこと」を一読者としても尊重したい。

 結果としてであるが、ドラマの方は「キスシーン」があることが明言されていた。市川よりも先に山田が唇を奪われるという展開は無くなった訳である。それは読者として安心材料だ。

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『僕の心のヤバイやつ』Karte.108

修学旅行と身近な刺客

 そんなこんなで無事というか何といいうか、山田も一緒に行くことになった修学旅行。

 どうやらクラスのギャル安藤カンナは修学旅行中にカップルを誕生させることを画策しているらしい。そしてその最たるターゲットが市川と山田なのだ。

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『僕の心のヤバイやつ』Karte.108

 半沢との会話の中で、思わず山田の好意に対して否定の言葉が出る。(勿論本意ではない)それに対して、半沢は市川のことを(意訳すると)軟弱者と煽る。その言葉に対しては市川は明確に「違う」と否定するのだ。(否定できるようになったのだ)

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『僕の心のヤバイやつ』Karte.108

様子の異なる山田

 親友のバヤシコには分かるのだ。オーディションを諦めたこと、それを契機に山田に元気がないこと。それは市川よりも山田との付き合いが長いバヤシコだからこそなのだろう。

 市川は電話でそれらの背景を察することは出来ても、そこまで知ることは出来なかった。バヤシコに言われるまで、気づかなかったのだ。

 そこには本人が言うように「修学旅行」というイベントに浮かれていたことが原因かも知れない。だが、一度気づいてしまったら、市川だって山田が楽しくない状態を放っておくような質ではない。

 修学旅行中に市川の想いをクラスに知られたくはない。しかし、市川は山田の想いを知りたい。知らなくてはいけないのだ。

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『僕の心のヤバイやつ』Karte.108

主のイチオシシーン

 後ろの席で女子と楽し気?に話す市川に嫉妬の目を向ける山田。

 あいもかわらず尊い。

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『僕の心のヤバイやつ』Karte.108

次回更新について

 『僕の心のヤバイやつ』は、マンガクロス | 秋田書店の新作漫画が無料で読める! (mangacross.jp)で隔週更新である。次回更新は2022年11月22日予定である。

 

 

【感想と考察】『【推しの子】』99話「飲み」【漫画】

 2022年11月2日発売「ヤングジャンプNo.49」で『【推しの子】』の最新99話「飲み」が掲載・更新されています。

 前回の感想記事はこちら。

isoisogingin.hatenablog.com

isoisogingin.hatenablog.com

 私は重曹推しです。

 記事の内容やそれに含まれる感想もだいぶ重曹寄りになることはご容赦ください。

 それについて、ちょうど一年ほど前ですが、『【推しの子】』の今後の展開について割と本気で考察した記事を書いていますので、今後の展開まで予想したい方は以下の記事をチェックしてください。この記事で書いてある考察などを前提にこの記事のように各週の感想記事も作成しています。

isoisogingin.hatenablog.com

99話「飲み」感想と考察

B小町への勧誘

 今回は重曹回ではあるが、正直繋ぎの回という印象だ。

 鈴音コミミもとい吉住未実。

 Vtuberであった彼女が前世バレをしたらしい。

 そこで、ルビーが勧誘するのだ。いつからお前はB小町の人事担当になったのだと私は叫びたい(重曹もMEMもアクアが勧誘している)。ここら辺はルビーと他のメンバーのパワーバランスが偏っていると読み取れる。

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『【推しの子】』99話 より

 そして、その加入を気にするのが重曹ちゃんなのだ。ただでさえ、B小町の中で腰巾着の様な立ち位置なのに、同じキャラの人が加入する。それはアイドルとしての存在意義を悩む重曹にとって大きな不安要素なのだ。

アルハラと手の速そうな監督

 落ち込む重曹を呼び出したのは役者の友達アザマミコらしい。未成年のはずの彼女もアルコールを片手にしている。この漫画お馴染みの芸能界の闇描写である。

 そんなアザマミコは重曹に酒を強要する。

 ピピー! アルハラ警察です!!

 勿論漫画の中、フィクションの物語だから許されるのではあるが、心の中は空気を読んで酒を飲もうとする重曹を全力で止めたい気分である。

 そんな重曹の代わりに酒を飲だのが島政則監督。通称シマカンらしい。今を時めく映画監督の様である。シマカンに褒められる重曹を見て、友達のアザマミコの視線が冷たい(ように感じる)のは、ドロドロした展開が来そうな予感である。

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『【推しの子】』99話 より

 シマカンは重曹のことを評価している。

 だから、名刺を渡しながら誘い文句を口にするのだ。

 「LINEを交換しよう」

 絶対そのLINE危ないやん!!(←心の声)

監督の存在

 この物語では、監督と言えば当初から五反田監督が登場している。シマカンは、映画監督としては2人目の登場である。


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『【推しの子】』99話 より

 そして未来軸では、五反田監督がアクアらと共に(恐らく)ヒット映画を作成する。アイに捧げると告げられたその作品の監督は五反田監督のはずだ。

 で、あるならば、シマカンもアザマミコも新章のためのモブキャラである。恐らくアザマミコ絡みで重曹に何かしらの批判が降りかかりそうな予感がするし、そこにはシマカンも関わって来そうである。(恐れすぎか?)

 結局今を時めく一方で、未来軸には居ないのだ。

 盛者必衰。未来軸までにシマカンは落ちぶれるのかもしれない。

 願わくば、重曹がこんな男にお持ち帰りされたり、変なゴシップの元にならないでほしい。前者はともかく、後者は割とありそうで震えている。

今週の重曹ちゃん

 重曹がアイドルを続けている要因がハッキリとアクアであると描かれている。アクアに跳ね飛ばされたシーンを闇とすると、ステージ上で内心宣言したシーンは明確に光として描かれている。

 タイトル回収までしたこのワンシーン。

 この場面が今後どれほどの価値を持つのか。

 これ以上の価値を持つのか。

 注目したい。

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『【推しの子】』99話 より

次回更新は

 次回更新は来週11月10日(木)の予定です。

【感想と考察】『僕の心のヤバイやつ』Karte.107「僕は楽しみ」【漫画】

 今回は珍しく心が痛い回。

 この痛さも思春期なのだろうか。

 2022年10月25日にマンガクロス | 秋田書店の新作漫画が無料で読める! (mangacross.jp)『僕の心のヤバイやつ』最新107話「僕は楽しみ」が更新されたので感想と考察を書いていこうと思います。

 前回の感想記事はこちらから。

isoisogingin.hatenablog.com

 

 

Karte.107「僕は楽しみ」感想と考察

夏服イベント到来

 体育祭という陰キャ及び運動音痴絶叫のイベントを乗り越えた二人。山田(運動音痴)と市川(運動音痴かつ陰キャ)にとっては穏やかな日常が還ってきた。

 しかし、学校生活という管理社会の中では定められたイベントが波の如く押し寄せる。その内の1つが夏服イベントである。

 普通に考えるならば、暑ければ涼しい格好をすれば良いし、寒ければ着込めば良い。ただ学校という箱の中では何故か夏服/冬服の変わる日というのが定められている(私服校は除く)。

 当然、集団生活を強制される学校という場所において、その変化に乗り遅れることは大きな疎外感に繋がるだろう。大人になって思い返すと不可思議な環境である。

 そして、その流れに乗り遅れるのが市川だ。

 登校中にペヤングを食べる山田(朝食ペヤングは厳つい笑)の姿を見て気づくのだ。着替えに家に戻って遅刻する訳にもいかない。仕方なく登校中に少しずつ学ランの上を脱いでいくことで恥ずかしさを紛らわす。

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『僕の心のヤバイやつ』Karte.107 より

修学旅行イベント

 山田はいつも以上に機嫌が良さそうだ。

 そんな中で、修学旅行の班決めが始まる。そうなのだ。学校生活において強制的に訪れるイベント1位(ブログ主調べ)の修学旅行である。ある人にとっては、友達とわいわい慣れない土地へ行く楽しみなイベントである。一方で、ある人にとっては、そこまで仲良くない人と家に帰ることも出来ず束縛される地獄のような時間である。

 結局物事は見方によって変わる。

 そんな市川は神崎に班に山田を入れると提案される。市川は勇気を出して山田を誘うが、そもそも班決めは宿泊施設での部屋の班であったし、神崎が言う山田は男の山田徹平(おそらく初登場)であったしで恥ずかしさしかない。

 それでも市川は、修学旅行が楽しみなのだ。

 山田から借りている『君オク』にも修学旅行シーンがあるらしい。その中で登場人物がキスすることから市川の妄想は広がっていく。それほどまでに市川は修学旅行が楽しみなのだ。

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『僕の心のヤバイやつ』Karte.107 より

山田の苦悩

 一方で山田は苦悩を抱える。

 山田は隠すのが上手ではない。だから市川にもその「ヘン」な部分は伝わる。それでも山田は市川には言えないのである。勿論守秘義務もあるだろうが、それ以上の想いがあるからだろう。

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『僕の心のヤバイやつ』Karte.107 より 

 どうやら、山田は『君オク』のドラマの主演オーディションを受けたらしい。山田の枕元に置いてある文字を見る限り「第2次」のオーディション通知であることが分かる。そして今朝山田の機嫌が良かった要因はこれであることが窺える。

 つまり、山田はドラマ化する『君オク』の主演オーディション第2次選考を無事通過したのだ。『君オク』と言えば、山田が好きで市川に勧めた作品。市川と山田を繋いだ作品である。加えて「主演」であることから、山田の役者人生を賭けたものであることが分かる。おそらくその第3次オーディションが修学旅行と被っているのではないか。

 一方で、山田は市川の過去を知っている。

 学校に馴染めず林間学校に行かなかった。そんな市川が修学旅行を楽しみにしている。当然、山田は好きな人と修学旅行に行きたいし、好きな人が楽しみにしていることに水を差したくない。

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『僕の心のヤバイやつ』Karte.55 より

 市川が言うように、『君オク』には修学旅行で想い人同士がキスをするシーンがある。市川が妄想するのだ。主演オーディションのためにも漫画を読み込んだ山田であれば尚更想像しただろう。

 好きな人との修学旅行。

 学校生活の中で訪れるイベント。

 一生に一度しか訪れないイベント。

 市川との修学旅行は絶対に楽しいと想像がつくだろう。一方で、役者の道も市川に気付かせてもらった道なのだ。ましてや、山田自身が「頑張りたい」と決めた道でもある。

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『僕の心のヤバイやつ』Karte.80

 だから山田は思わず涙を流すのだ。市川には悟られないように画面を切って。役者としての道も想い人との絶対に楽しい修学旅行も本来では天秤に掛けられないほどに大切なものなのだ。 

 そして冒頭でも記述した通り、学校生活において皆と違うというのは疎外感にも繋がる。修学旅行というクラスの誰もが共有する思い出を共有できない。それはある意味で怖い事でもある。

 自分の大切なことを2つ天秤に掛けた。

 その結果、市川に伝えることも出来ず、泣きながら楽しそうな修学旅行の話を続ける。因みに私はこの涙がどちらの涙なのか分からない。オーディションを諦める涙なのか、修学旅行を諦めながら市川に隠す涙なのか。

 山田が市川に対して嘘を付かないのであれば、市川が林間学校に行かなかったことを知っているからこそオーディションを諦めたことになる。

 一方で、修学旅行を諦めるのであれば、マネージャーや両親など色んな人の力を借りて、自分を評価してもらえた。そんな場所を休むことはできず、一方で修学旅行を楽しみにする市川に言い出せないでいる。

 主の個人的な意見としては後者だ。オーディションはマネージャーや両親など多くの人が関わっているだろう。演技を評価してくれた人だって居るのだ。だからこそ、山田の中にオーディションを休むという選択肢はない。ただ、その中で市川やクラスメイトと修学旅行を共に出来ないことに泣いていると解釈した。

 ハートフルな展開が続く『僕ヤバ』に偶に訪れる胸痛む展開。今回の山田の苦悩は今までの展開を遥かに超える辛さがある。だからこそ、ここから市川がどのように動くのかが気になるところだ。

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『僕の心のヤバイやつ』Karte.107 より

主のイチオシシーン

 鼻歌を歌う機嫌が良い山田。

 実は過去にも機嫌が良いときは鼻歌を歌うのが山田の癖である。単行本を持っている方は是非とも探してほしい。

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『僕の心のヤバイやつ』Karte.107 より 

次回更新について

 『僕の心のヤバイやつ』は、マンガクロス | 秋田書店の新作漫画が無料で読める! (mangacross.jp)で隔週更新である。次回更新は2022年11月8日予定である。

 

【感想と考察】『おとなりに銀河』4巻【漫画】

 雨隠ギド先生が描く新作『おとなりに銀河』。

 その最新4巻の感想を書いていく。

 前回記事はこちらから。

isoisogingin.hatenablog.com

『おとなりに銀河』4巻感想と考察

始まりと終わり

 4巻の感想を一言で表すなら「糖分過多」。

 本巻では、一郎としおりがこれでもかとイチャイチャを繰り広げる。しかし本質は変わらず、純粋で真っすぐな二人の姿が描かれている。

 そんな4巻の物語は、一郎が連載していた漫画の打ち切りから始まる。

 「諸行無常」。

 平家物語の冒頭文句であり、仏教の根幹を成す思想である。耳馴染みの良い言葉であろう。

 始まった作品はいずれ終わる。そして、終わる作品があれば始まりそうな作品もある。

 一郎は打ち切り。一方で、しおりは新人賞への申し込み。そんな対極的な状況であるものの、そこに至る道のりは同じなのだ。一郎は物語を上手く終わらせるために、漫画をまとめて描いていかなくてはいけない。しおりは申し込みのために、全て自分の手で漫画を描かなくてはいけない。要約すれば、二人とも膨大な作業に追われるのである。

 忙しければすれ違う。

 しかし、しおりは前向きに捉える。

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『おとなりに銀河』16話 より

 二人とも「漫画を描く」という点では全く同じ作業。しかし、その内容は全く異なる。終わるために描くことと、始まるために描くこと。その際に用いるエネルギーや感情も違う。

 描きたかったものを描き切れない不甲斐なさ、一つの夢が終わってしまう悲しさ、仕事を失うという不安。多くの感情が渦巻くのだろう。

 しおりの方は、なんと新人賞期待賞を受賞する。

 先輩漫画家として、一郎はしおりに感想を求められる。一郎の感想は「面白かったし悔しかったー…」。自分の方が先輩という自負はあって、大賞ではなく期待賞という過小評価があって、それに気づいた自分の器の小ささに驚いて。

 また一方で、その時間はしおりにも不安を与える。漫画を読んで感想を言語化するまでの時間。人の評価を仰ぐその時間が首が絞まる思いではなかろうか。ましてや、しおりは島民の感情が自動的に流れ込んでくる環境で育った。

 つまり、この不安すらも一郎と出会って知ったものなのだ。

 "他人"だからこそ感じる不安。でも、その不安すらも共有できる。恋人という関係になった二人はその感情も過程も全て曝け出すほどに純粋である。しっかりと言葉に残す二人は、その不安すらも共有できる正しく”素敵な関係”であると思う。


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『おとなりに銀河』16話 より

 加えて、これを機に名前呼びになるので目を見開いて読んでほしい。糖分過多注意である。

他人の感情

 上述した通り、4巻はイチャイチャ回である。しかし、裏テーマとして語られていることに他人の感情を知るという事が挙げられる。

 しおりは島民と交信できる環境で育った。

 しかし、島外では当然自分以外の人の感情は分からない。この「分からない」ことは怖い事なのだ。そして世の中は多様性に満ちている。誰しもが姫を中心に生活していた島内とはまるで違う。人それぞれ持っている感情は十人十色で、それが立場の違いによっては否定感につながることもある。

 しおりの描いた新人期待賞を受賞した漫画がSNSでバズる。

 一斉に押し寄せる大量のコメント。当然その中には肯定的/否定的様々な感想がある。本来はそれを、割り切ってしまうのが精神衛生上は正しいのだろう。しかし、他人の批判に慣れておらず、かつ純粋なしおりはそれすらも正面から受け止めようとする。

 しかし、当然無理なのだ。

 負の感情を受けることに慣れていないしおりには、ネットの感情は混沌で重すぎる。

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『おとなりに銀河』18話 より 

 ここで一郎(彼氏)の出番なのだ。

 落ち込む彼女にかける言葉。それは自身を無くしているしおりに、真っすぐな想いを伝えることである。他人の感情は必ずしも負の感情とは限らない。

 好きだ。面白い人だ。

 一郎が率直な想いを伝えることで、しおりは元気を取り戻す。

 前向きに捉えれば、「そういう人も居る」。例え、自分とは価値観の異なる意見だとしても、それに触れられるだけで貴重なことなのだ。それを理解したから、しおりは島から出て正解だったのだろう。

緊急事態

 世の中は正の感情も負の感情も跋扈する。同様に、良いことがあれば、悪いこともある。しおりと一郎の幸せそうな日常は雲行きが怪しくなる。

 一郎が倒れたのだ。

 病名は急性虫垂炎。

 腸が腫れることによる病気で、一郎は一週間程度の入院を余儀なくされる。

 しおりは彼女ではあるものの、身元保証人とはなれない。もか姉の登場により、無事入院の手続きまで済ませることはできたが、しおりには無力感が残る。

 退院後、一郎は何も起きないように頑張るのではなく、何か起きても大丈夫なように備えておくことが重要であると考える。そして、それはしおりと一緒に居たいと願うからこそ、しおりと一緒に考えることなのだ。

 正面から想いをぶつけ合えるこの二人なら、問題は無いのだろう。

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『おとなりに銀河』19話 より

 また、202号室の穂波さんと205号室の栗津さんの関係にも注目だ。穂波さんはネイリスト、栗津さんは会社員。穂波さんはしおりと仲が良く、一郎が倒れたことに対しても、あれやこれやと手伝えることを考える。そこに、居住者としてのライン引きをしたのが栗津である。冷静な判断からなる正論に穂波は納得すると共に「きゅん」としている。

 恋人関係が長く続かないという穂波にも新しい春が来たのかもしれない。普段はふわふわしている栗津の冷静な一面。これがギャップ萌えか。

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『おとなりに銀河』19話 より

イチャイチャは続く

 一郎の入院があったものの無事に退院したことで、日常が戻ってきた。つまり、一郎としおりのイチャイチャも戻ってくるのだ。

 グランピングに行くことになった一同。展開としては、しおりが流れ星の姫であることを自白する。それをチビちゃんもか姉含む一郎以外の人が聞いた上で信じてくれるという重要な場面がある。

 しかし、そんなもの二人のイチャつきの前には小さい問題だ。実はグランピング当日はしおりの誕生日である。今まで誕生日のたびに島民から大量の贈り物を貰ってきたしおり。ただし、一郎が慣れない店に入り、必死に考えて選んでくれたというネックレスは何よりも嬉しいものなのだ。

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『おとなりに銀河』20話 より

主のイチオシシーン

 お家デート回のこのシーン。

 初めてのお泊りデートに緊張する一郎としおりの表情に注目である。この後、アニメ祭りになったのも二人らしくて好きである。

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『おとなりに銀河』17話 より

【感想と考察】『【推しの子】』98話「道を外す」【漫画】

 2022年10月20日発売「ヤングジャンプNo.47特大号」で『【推しの子】』の最新98話「道を外す」が掲載・更新されています。

 前回の感想記事はこちら。

isoisogingin.hatenablog.com

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 私は重曹推しです。

 記事の内容やそれに含まれる感想もだいぶ重曹寄りになることはご容赦ください。

 それについて、ちょうど一年ほど前ですが、『【推しの子】』の今後の展開について割と本気で考察した記事を書いていますので、今後の展開まで予想したい方は以下の記事をチェックしてください。この記事で書いてある考察などを前提にこの記事のように各週の感想記事も作成しています。

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98話「道を外す」感想と考察

未来軸の重曹の発言の真意

 上述してるが私は重曹推し読者である。だから感想記事を読むうえで多少の偏りは許してほしいし、あかね推しの人はブラバしてもらっても構わない。

 以前から本ブログ記事で散々書き殴ってきたヒロインレースの考察。物語の構造上、その役者に値するのは重曹とあかねの二人であり、二項対立の如く対比され描かれてきた。

 その中で先週の記事で論点として挙げたのは重曹の未来の発言である。

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『【推しの子】』6話 より

 重曹は未来軸で「天才だってナイフで刺されればお陀仏」と発言している。この発言について、話掲載当初はアイを指すものだと考えられた。しかし、あかねの登場と重曹との経歴によって、アイをミスリードにしたあかねを指す発言であると考察されるようになった。

 天才がアイを示す場合について考える。重曹は未来軸において、アクアの作成する「作品作り」に参加している。となれば、アイとアクア、ルビーのことも知っているかもしれないし、その事実と「作品」に紐づけた発言であると分かる。

 一方で、天才があかねを示す場合について考える。監督らの発言から、アイの真実を題材にしていると思われる「作品」。それに本筋では関係しないであろうあかねの死を話題にするのは不謹慎だとか、不誠実だとか、嫌味だとかいろいろなものが映る。重曹が嫌な奴に思えてくるのだ。

 だから、私は私の好きな重曹像を信じて、前回感想記事時点では「あかねは死なないでくれ」という考察とも言えない願望を記した。

 結論から言う。

 あかねは死ななかった。

 願望が届いた様で何より。

 あかねはナイフで刺されるのではなく、通行人とぶつかって足を滑らせる。そこを助ける人物として、アクアが登場する。丁度、あかねが自殺未遂した時と同じ構図である。

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『【推しの子】』98話 より

 とりあえず死なんくて良かった。

 しかし、あかねはナイフを仕込んで「カミキ」を殺すつもりでいたようだ。マジで自分の頭の中だけで完結して、犯人だと思い込んでガチでナイフまで持ち出すのは普通に怖い。ここら辺のあかねの暴走ぶりも後述するが、あかねの歪さである。

アクアの外道ぶり

 「道を外す」と書いて外道。

 98話では、アクアの外道ぶりが描かれていた。というのも、私が「あかねが死ななかった」という事実に胸をなでおろす一方で、当事者であるあかねは意外な所に目をつけるのだ。

 あかねは「カミキ」を殺すつもりだった。アクアを復讐から解放するために。アクアより先回りする形で、カミキに向かうことができるはずだった。だから、アクアが同じ場所に居るのはオカシイのである。

 その疑惑の正体は読者もビックリ。

 なんとGPSを仕込んでいたのだ。どうやら『今ガチ』が終わった後少ししてつけたらしい。そして時間が経過した今も確実にそれは機能していた。

 アクアはどこまで行ってもあかねを復讐の道具として使った。あかねが願った恋人という対等な関係とは程遠い、利害関係であることを明らかに示す。

 結局、『今ガチ』のラストシーンから、アクアとあかねの関係は変化はしていないのだ。どれほどあかねが恋人関係を望もうとも、残酷ではあるがこれが結末である。

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『【推しの子】』30話 より

アクアとあかねの幕切れ

 利害関係と上述したが、形としてはあかねが心配だからこそ遠ざけたのかもしれない。その言い訳として仕込んであったGPSで納得させただけかもしれない。

 それでも、「二度と関わらない」とまで宣言した。

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『【推しの子】』98話 より

 この発言は、ある意味アクアとあかねの関係をハッキリと終わらせるものだろう。

 地獄までついていく、と言いながら一人で「カミキ」に近づくつもりでだったあかね。仮カップルを始めてわりと序盤にGPSまで仕込んでいたアクア。

 それらの皺寄せの1つかもしれない。

 ただ、1つ言えるのは、重曹が大切だと言いながら安全を保障するために遠ざけ、一方のあかねにはGPSをつけていた。ただただアクアがクズ男なのだ。

道を間違えたと自覚するのであれば、復讐の道に突き進む前にごめんなさいが必要である。当然その謝罪は重曹にもあかねにも必要である。そもそもアクアが拗れてなければ、状況は複雑にはならなかった。

 当のあかねはアクアを救えなかったことに涙を流すのである。一方でアクアはあかねの恋心を考えることなく、復讐に突き進むことしか考えていないのだから、大したエゴイストである。

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『【推しの子】』98話 より

 だがしかし、アクアのことをエゴイストと称するのであれば、あかねもまた同様にエゴイストであることは認めざるを得ない。だからこそ私は、この涙があかねの本心であればあるほど、自分のエゴを押し付ける形に見えてしまう。

 作者がキャラに言わせた「二度と関わらない」。

 今後あかねの登場が文字通りあるのか否かにも注目だ。

今週の重曹ちゃん

 今週も出番はなし。

 でも、文字通りアクアとあかねの関係が断たれたとするならば、残されたのは重曹ヒロインルートのみである。そういう観点で、重曹の波動は感じた。

次回更新は

 次号休載なので、次回更新は11/2(木)です。